【アンケート番外】保持力とクライミンググレードの相関研究論文

前回まで3回にわたり、Beastmakerのぶら下がり時間や懸垂回数とクライミンググレードの関係について、アンケート結果をまとめました。新型コロナウイルスの拡大に伴ってBeastmakerのフィンガーボードを自宅に設置した人が増えたことを見込んでアンケートを行いましたが、実はこのような調査は、簡易な調査からシステマティックな研究まで過去に何度も行われています。今回のアンケート結果と見比べてみると面白いので、3つ紹介します。Latticeを除く2つは、web上で結果もすぐ見られるので、興味のある方はやってみてください。

Lattice Trainingによる研究

おそらく発表済みの研究で最新のものは、Lattice TrainingのOlie Torrが論文として発表したものになります。

www.researchgate.net

こちらの調査は、Lattice Trainingが販売しているハングボードを使用し、片手で5秒間保持できる限界重量を測定しています。重量は、自分の体重に重りを加えたり、プーリーで負荷を軽くしたりして調整します。

研究の本来の目的は、クライマーの保持力を測定するための測定方法として、この方式の信頼性を確認することとなっています。その中で付随的に、保持できる重量とクライミンググレードの関係性も確認しています。散布図や近似曲線はありませんが、相関係数は5.0以上で、それなりによい相関が確認できているという結果になっています。

Lattice Trainingは、データドリブンなクライミングレーニングとアセスメントの提供を強みとしており、上記のような論文の他にも自社のウェブサイトで様々なインサイトを紹介しています。以下の記事でまとめていますので参考までに。

takato77.hatenablog.com

 

 

redditで実施されているアンケート調査

https://toclimb8a.shinyapps.io/maxtograde/

こちらは非常にライトな調査で、18mm〜20mmのエッジであれば製品も問わず回答可能です。そして結果もすぐに確認することができます。

重りをハーネス等で体に装着して、18mm〜20mmのエッジに10秒ぶら下がります。Lattice Trainingの調査と同様に、装着できる重りの最大重量を回答します。すると即座に、過去に回答した2000人以上のデータと合わせて、保持重量とグレードの散布図が表示されます。

現時点で2000人以上が回答しています。投入誤りと思われる回答もそれなりにある(体重の5倍近くの重さを保持できるとか、V17登った人が10人近くいるなど)ものの、全体的な傾向がよく見える結果になってます。

傾向は管理人が実施したアンケートと同様です。全体的には保持力が上がるにつれてグレードが上がる傾向があるものの、同一グレードでも保持力のバラつきがかなりあるという結果です。

Climbing Strength Calculator

こちらは、体重を入力するだけで、あるグレードを登るために必要な保持力を推定して表示してくれるツールです。

beastfingersclimbing.com

コロラドのハングボードメーカーが、過去に自社のハングボードを使用して行った調査結果を元に推定しています。例えば体重66kgと入力すると、グレードと保持力の対応表が表示され、V7であれば片手で41kg保持できるといいよ、なんてことがわかります。注意点としては、こちらはフラットエッジではなく、15度にインカットした20mmエッジでの保持力となってます。

過去の調査結果は論文もPDFも公開されていますので参考に。

https://static1.squarespace.com/static/56830ef60ab377cb562da204/t/5d115bf55f2b9e0001a25faa/1561418760351/BF_strength_climbing_correlations-MAR282018_web.pdf