【ジャミングテクニック】リングロックの2つのやり方

書籍「CRACK CLIMBING」内のアンケート集計 - May the friction be with you!

で紹介した、Pete Whittakerの著書「Crack Climbing」を細々と読み進めています。本当に使う機会があるのかわからないマニアックなテクニックも紹介されてますが、基本的なジャミングテクニックについても今まで意識していなかった細かなコツが紹介されていて参考になります。

 

Crack Climbing: The Definitive Guide (Mountaineers Outdoor Expert)

Crack Climbing: The Definitive Guide (Mountaineers Outdoor Expert)

  • 作者:Whittaker, Pete
  • 発売日: 2020/01/01
  • メディア: ペーパーバック
 

 

今回はその中から、リングロックについて個人的に新たな知見があったので、自身の備忘も兼ねてまとめます。

 

リングロックとは

クラッククライミングは割れ目の幅のサイズに沿って、フィンガー、シンハンド、ハンドというように異なったジャミングテクニックを用います。リングロックは、フィンガーとシンハンドの間くらいのサイズで有効なテクニックなので、指の太さにもよりますが、キャメロットの紫くらいの割れ目で出番があるテクニックです。

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(左下から)エイリアン赤、キャメロット紫0.5、キャメロット緑0.75

通常のフィンガージャムは人差し指・中指・薬指をクラックに差し込んでから、ひねることでスタックさせますが、割れ目の幅が広くなると緩くてスタックしなくなるので、下から親指も差し込んでジャミングのサイズを広げることでスタックさせます。

 

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リングロックの原理

このサイズの広げ方について、今まで管理人が認識していた方法と、「Crack Climbing」で紹介されていた方法を2つ紹介します。

スライド式のリングロック

管理人が今まで認識していたリングロックのやり方は以下の通りです。

  1. 親指の腹をクラックの淵にあてがう
  2. できたV字の隙間に人差し指、中指、薬指を落とし込む
  3. 通常のフィンガージャムと同様に、小指方向へ手をひねってスタックさせる

 

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スライド式のリングロック

3の際に、親指は上方向へ、その他の指は下方向へ互い違いに滑らせるようにしてスタックを強く効かせるので、便宜的にスライド式のリングロックと呼ぶことにします。この時親指の第一関節はクラックの淵に当たらず浮いています。

今まで管理人が見てきた参考書やweb上の動画はこのやり方が多かったと思います。山渓登山技術全書のフリークライミングがそうですし、Peteと一緒にWIDE BOYZとして活動しているTom Randallも、ワイルドカントリー社のクラック講習動画でそのように解説しています。


Wild Country Crack School - Episode 7 - Advanced Fingers - with the Wide Boyz

エクスパンション式のリングロック

一方、「Crack Climbing」では以下のやり方を紹介しています。

  1. 親指の腹をクラックの淵にあてがう
  2. 親指の関節をクラックの逆の淵にあてがい、突っ張り棒のようにエクスパンションさせる(広げる)
  3. 親指の上に人差し指・中指・薬指を落とし込む
  4. 通常のフィンガージャムと同じ様に、小指方向へ手をひねってスタックさせる

 

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エクスパンション式のリングロック

この方式では、クラック内で親指が突っ張り棒のような支点となり、その上にフィンガージャムを決めるようになります。便宜的にエクスパンション式のリングロックと呼ぶことにします。

Twitterでジェリーさんがコツを解説してくれています。

親指を奥に入れ過ぎると、親指の第一関節を曲げる力が抜けてエクスパンションが効かなくなるので、浅目に決める方がよさそうです。

2方式の比較

支持力

自作のプチクラックボードに重りをぶら下げて、支持力を評価してみました。

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7秒保持できる限界の重さは、スライド式が15kg、エクスパンション式が17.5kgで、エクスパンション式の方が若干支持力があるという結果になりました。足ブラでは到底ぶら下がれませんが、しっかり足を踏んで荷重を分散できれば、若干傾斜があっても前進することができそうです。

参考までに、管理人の9.5cm幅ワイドピンチの保持力は16kgなので、ワイドピンチと同程度の支持力となります。

決めやすさ

エクスパンション式の方が、親指を突っ張る一手間が増えるので、ジャミングの決めやすさはスライド式に軍配が上がります。スピード重視でパッパッと手を出していくときはスライド式、確実にスタックさせて動きたいときはエクスパンション式なんていう使い分けもできそうです。

呼称(リングロックかサムスタックか)

スライド式とエクスパンション式のリングロックの違いは、クラッククライミングの本場アメリカでも話題になっていました。

www.mountainproject.com

リンクしたMountainProjectのフォーラムでは、親指の第一関節を曲げるエクスパンション式をリングロック、第一関節を曲げないスライド式をサムスタックと呼んで区別する意見が多かったですが、しっかりしたコンセンサスは無さそうでした。

まとめ

  • リングロックにはスライド式とエクスパンション式の2方式がある
  • 正しく決めることで、エクスパンション式もスライド式と同等かそれ以上の支持力を得られる
  • ジャミングを決めるスピードはスライド式の方が若干早区決めることが可能

呼称と定義は若干まちまちですが、スライド式とエクスパンション式という2つのリングロックがあることと、それぞれメリットデメリットがある事を知っておけば、意識して練習することができます。クラッククライミングを行う人は参考にしてみてください。