ジョナサン・シーグリストの肩鎖関節脱臼リハビリ記録

プロクライマーのジョナサン・シーグリストは、7月下旬にマウンテンバイクの事故で左の肩鎖関節を脱臼しました。以下動画のインタビューはARC'TERYXが主催するコミュニティイベントのもので、受傷から5週間のリハビリ内容と回復状況を共有しています。プロクライマーの具体的なリハビリのタイムラインがわかり、参考になります。ポイントを噛み砕いて解説します。


AC Joint Sprain Grade III: Full Interview with Jonathan Siegrist

 

インタビュアーは、以下の記事で紹介した「Climb Injury Free」の著者、Jared Vagyです。

takato77.hatenablog.com

 

はじめに

はじめに、今回のジョナサンの回復までのタイムラインはかなり早い印象で、アグレッシブに負荷をかけているように感じますが、常に整形外科医の診断と理学療法士の指示の元で実行しています。どんな動作でどれくらい負荷をかければよいのかを一人で悩むのは非効率で、短いサイクルでプロの判断と指示を得るのが最も効率的であるということを、インタビュー中でも強調しています。

怪我の内容と契機

受傷契機はマウンテンバイクからの落車です。ハンドルを掴んだまま、左肩から地面に着地するように落車しています。幸運にも病院から5分くらいの場所での事故だったため、迅速な一次措置ができたとのことです。

X線撮影の結果、肩鎖関節の脱臼と診断されました。肩鎖関節は鎖骨と肩甲骨の関節で、それらを繋いでいる靭帯が断裂してしまい、鎖骨が上に跳ね上がってしまっている状態でした。

肩鎖関節は、骨と骨がはまりこんで安定しているような形状ではないので、外から力を加えてはめ込んで(整復)安定するものではなく、腕を下げると連動して鎖骨が跳ね上がってしまいます(リンク先のX線イメージ参照)。そのため、一次措置はは三角巾で吊って、鎮静剤を処方されて終わりとなりました。

一次措置の翌朝に整形外科を受診しています。診断は同じく肩鎖関節の脱臼(グレード3=完全脱臼)で、近傍の肩関節周辺インナーマッスル(ローテーターカフ)は問題ないことを確認しました。ここで、手術は行わずに保存療法で治す方針で進めることを決定しています。

リハビリ状況

1週目:保定して痛みを取る

受傷から約1週間は炎症が治まって痛みが和らぐまで患部に負荷がかからないように保定しています。この際に三角巾で吊るのは数日でやめており、ロイコテープという非伸縮性のテープで保定しています。これにより、夜寝る時にだいぶ快適に過ごせたとのことです。

ロイコテープは一般的なスポーツテーピングと比べて、強固で剛性高いのが特徴です。運動を行なっても70%以上の張力を保つことができます。通気性の悪さ・粘着力の強さから肌を痛める可能性があるので、カバーロールというアンダーテープの上に貼るようにします。

この時期においても全く患部を動かさないでいると却って回復が遅くなるので、日に数回軽く肩周りを動かしていたとのことです。といっても腕を肩から上にあげる動きは痛みがありNGで、腕が肩より下の範囲で、本やマグカップを取るような行動をしていたようです。

2週目:可動域改善、BFRレーニン

2週目に入ると積極的なリハビリメニューを徐々に開始しています。一つは患部の可動域改善、もう一つは患部以外のBFRレーニングです。

可動域の改善

左腕を肩より上に挙げるような、可動域の改善を開始しています。その際には左腕を自力で動かすのではなく、健常な右手で左腕を支えながら、トライ&エラーで痛みが出ない範囲の可動域を徐々に広げるようにしています。

健常な右腕はウェイトトレーニングも再開しましたが、左腕の患部の硬さに影響されて、実施できないメニューもあったようです。例えば右腕での片手ぶら下がりは、左肩が痛くて実施できなかったとのこと。

BFRレーニン

BFRレーニングは、バンドで血流を制限する事で、負荷の軽い運動でも強烈なパンプを発生させて筋細胞にストレスをかけることができるトレーニングです。関節を構成する腱や靭帯などの軟部組織に負担が少ないことから、リハビリに適しているトレーニングです。以下の記事でも詳しく紹介しています。

takato77.hatenablog.com

 

ジョナサンの場合、プロクライマーとして指力を維持する事を主な目的にBFRレーニングを採用しています。このフェーズではまだ腕を上げてハングボードにぶら下がることはできませんでしたが、BFRレーニングは肩より腕を上げずに指をトレーニングすることができます。また、ぶら下げる重りは5〜10kg程度でも十分にパンプするので、患部の肩鎖関節にかかる負荷も穏やかです。

また、もう一つ期待した効果として、BFRレーニング後に放出される成長ホルモンによる患部の回復促進もあったとの事。

3週目以降:段階的な筋力強化、動作の改善

ハングボードトレーニン

この週からは通常のハングボードにぶら下がるトレーニングを再開しています。その際に、患部に痛みが出ないように、腕を真上に上げるのではなく肘を90度に曲げた状態でぶら下がっています

当初、ハングボードトレーニングはもう少しリハビリが進まないとできないと考えていたようです。しかし、ソルトレークシティのカイロプラクター、ストレングス&コンディショニングコーチのタイラー・ネルソンに相談したところ、「ぶら下がってみたら?」と提案され、半信半疑でやってみたら痛み無くぶら下がれたとのこと。

これにより、少なくとも指の保持力を鍛えるトレーニングは、ほぼ受傷前の強度のトレーニングを行えるようになり、劇的にモチベーションが上がった出来事だったようです。

ライミングの再開と合わせた段階的な筋力強化

3週目から徐々にクライミングを再開しています。その際に、十分に低いグレードのルートから再開するのはもちろんとして、可動域を広げる動きを少しずつ試して、痛みの出ない動きに限って登るようにしています。例えば、健常な右手は全可動域を使うが、左手は当初、肩より上に挙げないようにして登るようにしていたとのことです。

可動域の拡大に当たっては、ライミングで痛みが出る動作を特定し、理学療法士に相談してトレーニングメニューを提案してもらってウェイトトレーニングを行い、再度クライミングで次のターゲットとなる動作を確認するというスパイラルを回しています。

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ライミングのムーブは多種多様なので、実際に登ってみて初めて痛みが出る動作に気づくことがあります。ジョナサンはガストン、クロスムーブなどを実例として挙げています。また、当然ながら、理学療法士からはこんな動きはまだしてはいけないという指示もあり、クライミングの際にはその指示に従ってムーブを調整していたようです。例えば、足ブラはNG、などです。

以上により5週目には、左腕を真上に上げることも可能な状態まで可動域が改善し、クライミングは5.12台を登るまで回復しています。ジョナサンは5.15クライマーなので、当然全力には遠いですが、この後数か月かけて100%に戻していくつもりという言葉でインタビューは終わっています。

その宣言通り、受傷後3か月半となる11/16に、ニューリバーゴージの「Super Pod」5.14dを登ったことをインスタグラムで報告しています。

 

Black Diamondのクラックグローブを買った

Black Diamondから発表されたクラックグローブを購入しました。岩との摩擦により手の甲を中心に擦り傷ができやすく、それを防ぐためにテーピングを行う人が多いですが、クラックグローブはテーピングを着脱可能なグローブで代替するものです。既にOCUNやOutdoor Resarchから先行製品がありますが、Black Diamondのクラックグローブは革新的なフィット感で話題となっています。岩場で少し使ってみたので、クイックにレビューします。

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購入方法

販売サイト

2020年3月には発売されていましたが、当初はコロナ禍の影響か、Black DiamondのWebサイト上のみで取り扱われていました。本記事執筆時点(2020/11月中旬)では、欧米系のアウトドア系オンラインショップで軒並み取り扱いが開始されています。管理人はOutside.co.ukから並行輸入しました。

クラックグローブ本体が£27.5、送料が£11.95、合計で日本円で5500円くらいです。発注してから2週間程度で届きました。

なお、日本の正規輸入代理店であるロストアローでは、まだ未取り扱いのようです。

サイジング

サイズ展開は5サイズが展開されており、管理人はSサイズを購入しました。サイズは、下の1と2のうち、長い方をサイズ表と当てはめて選びます。

  1. 手の平を広げて、中指の先端から手首の皺までの長さ
  2. 人差し指から小指までの付け根部分の外周

よいところ

フィット感

このクラックグローブのコンセプトは、クラシックなテーピングによる感触を出来るだけ再現することです。その目的とするところは主に2つです。

  1. クラックのサイズに対して、グローブをしてしない場合とできるだけ近いフィット感を得る
  2. グローブと手の間の隙間をできるだけなくして、ジャミング中にずれる感触を防ぐ

1つめの目的を達成するため、全体の厚みを1㎜以下に抑えています。スティッキーラバーはシンセティックレザーに単純に貼り付けるのではなく、シンセティックレザーに凹みを成型したところへ、0.6㎜のスティッキーラバーを張り付けることで、貼り付け部だけ厚みが増すことを防ぐ工夫がされています。厚ぼったく作られている先行製品に対して、大きなアドバンテージです。
2つ目については、プレスリリースでは3Dパターニングを採用とあるので、立体裁断でフィット感を高めていると思われます。実際に装着してみた感触も、テーピングと比べて遜色ないフィット感を実現しており驚きました。

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親指ガード

OCUNやOutdoor Researchなど、先行のクラックグローブ製品と大きく違うのは、親指のMP関節がしっかりカバーされていることです。この部分はフィストジャムで思いっきりクラックに当たり、テーピングなしだと管理人はほぼ100%流血するので、カバーされているのはありがたいです。ガビガビの花崗岩でフィストジャムをしてみましたが、しっかりガードしてくれて、無傷で登れました

装着のスピード

これは本製品に限らず、クラックグローブに共通のメリットですが、テーピングを巻くのにかかる時間が圧倒的に節約できます。

岩場で1日ゆっくり過ごす時には、テーピングを巻いてる時間もクライミング前のルーティンとして心を落ち着かせる大事な時間だったりしますが、数時間しか登れない時にテーピングを巻いてる時間は真っ先に削りたいのが本音です。また、ジムや自宅壁でクラックを定期的に練習したいなんて時にも、毎回テーピングを巻くようだと、時間が無駄なだけではなく、そのワンアクションが億劫になってトレーニング自体をサボってしまうなんて悪影響もありえます。

また、マルチピッチでクラックのピッチとフェースのピッチが混在してる際には、クラックのピッチだけささっとグローブを装着することができます。フェースではクラック用のテーピングは邪魔ですし、手の甲側の突っ張りでカチの保持感も悪いので、外して登れるのは助かります。

よいとも悪いとも言えないところ

フリクション

先行のクラックグローブ製品は、おそらくクライミングシューズのソールと同様の黒いスティッキーラバーが貼られています。これらのラバーは、後述しますが、フリクションがよくなり過ぎて、一種のズルをしていると感じるクライマーもおり、また使用しているクライマーを批判する風潮も少なからずある状況です。Black Diamondのクラックグローブは薄いラバー(白色)が貼られていますが、先に述べた通りテーピングのような感触の再現を目標としているからか、過剰なフリクションは感じませんでした

管理人は、粗い花崗岩で使用したのみですが、テーピングをした際に感じるフリクションと大差ない印象です。インドアでのサンド掛けしたつるつるの木材であったり、城ケ崎のような滑らかな岩質だと、もしかしたら良いフリクションを感じることができるのかもしれません。

イマイチなところ 

フィストジャム時の突っ張り感

タイトなフィット感とトレードオフになっていると思われるのが、フィストジャム時に感じる突っ張り感です。シンセティックレザーは余り伸びないので、フィストジャムを握りこむ際に、甲側の生地が突っ張り、握力を消費します。1,2手なら問題ないですが、フィストサイズが続くクラックでは握りこむ握力が低下するなどの影響があるかもしれません。

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管理人はぎりぎりのサイズで購入したので、1サイズ上にすると、このあたりの感触が変わるのかは試してみたいところです。

脱ぐ際の指の引っ掛かり

フィンガーループは片方の端は縫製されていることから、強引に抜くと縫製がちぎれないか気になります。特に管理人のように指の関節が腫れている場合はスルッと抜けないので、丁寧に脱ぐのは存外に煩わしいです。

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Cheating?

クラックグローブは、Black Diamondが発売する以前にも複数のメーカーから発売されています。素手でジャミングする場合に比べてフリクションがよくなるので、使用することはCheating(イカサマ、ズル)であるという論調も少なからずあります。テーピングですら、Cheatingと言われる事もあります。

rockandice.com

上記のRock&Iceの記事では、「真のCheating」と「Cheatingのようなもの」は違うものであり、先人が気づかなかった、よりスマートに登るための方法は全て、後者の「Cheatingのようなもの」なのだとしています。例えば以下のようなものです。

  • スティッキーラバーのクライミングシューズ
  • ハングドッギング
  • フレンズ、キャメロットなどのSLCD(スプリング・ローデッド・カムデバイス
  • ボルト
  • トップロープ、ヘッドポイント、レッドポイント、ピンクポイントなどの完登スタイル
  • フラッシュ
  • ティックマーク
  • チョーク
  • スティッククリップ

そして、クラックグローブは、それらのメソッドに新しく1つ加わっただけなのだと評価しています。(ちなみに、「真のCheating」が何かは言及してません。チッピングなどでしょうか。)

安全確保手段であるカムデバイスやスティッククリップと同列に語るのは少し違う気もしますが、"手足の力で岩を攀じることを補助する"という観点で言えば、少なくともシューズとチョークはクラックグローブと同じ性質の発明だったと言えるでしょう。

フリークライミングでスティッキーラバーシューズとチョークを使うのが当たり前になったのは、せいぜいここ数十年です。アメリカで最初の5.9は、ロイヤル・ロビンスにより、ヨット用のロープとテニスシューズで登られています。クラック・グローブも数十年後には当たり前に使われているなんてこともあるかもしれません。

 


Open Book the FIRST 5.9 - A Rock Climbing Story

 

結局は、トップエンドのプロクライマーでもなければ、個人がどこまでスタイルに拘るかというだけの話です。偉大なフリーソロイスト、マイケル・リアドンの以下の言葉をふまえて、個々人で判断すれば十分ではないでしょうか。

Onsight, barefoot, chalkless, soloing. That’s climbing. Everything else is a compromise

「オンサイトで取り付いて、裸足で、チョークを使わずにフリーソロする。それが真のクライミングで、それ以外は全て妥協さ。」

エネルギーシステムトレーニング(有酸素機構vol.3)

有酸素機構のエネルギーシステムトレーニングについて、前回はクライミングに即したトレーニング(ローカルエンデュアランス)の方法を紹介しました。今回はランニングやスイミングなど、一般的な全身を使った有酸素運動の効果や必要性について確認します。

 

前回までの記事は以下を参照ください。

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(全体像) - May the friction be with you!

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(ATP-CP機構 vol.1) - May the friction be with you!

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(ATP-CP機構 vol.2) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構vol.1) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構vol.2) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構Vol.3) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(有酸素機構Vol.1) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(有酸素機構Vol.2) - May the friction be with you!

 

今回の記事も、前回紹介したように、Eric HörstのPodcastの内容と、アメリカでClimbStrongというクライミングコーチ集団を率いているSteve Bechtelの記事を参考に記載しています。

 

trainingforclimbing.libsyn.com

 

www.climbstrong.com

 

また、最近復刊されたパフォーマンスロッククライミングでも、有酸素性全身持久力トレーニング(GAET=General Aerobic Endurance Training)について丁寧にまとめられており、参考になります。

 

 

一般的な有酸素運動の効果

一般的な有酸素運動は、ここでは全身を使った穏やかな運動として、例えばランニング、水泳、バイクマシンによるエクササイズなどを指します。まず、それらの運動により期待できる効果を確認していきます。

身体的なトレーニング効果

酵素の活性化、ミトコンドリア量の増量と活性化、毛細血管ネットワークの発達

ローカルエンデュアランストレーニングと同様に、一般的な有酸素運動においても、これらの適応は起こります。しかし注意点があります。これらの適応は特異性の原則に従うということです。つまり、運動している筋細胞近辺で起こる適応なので、ランニングやバイクマシンで言えば、主に足の筋肉に発現します。クライミングでは前腕の指屈筋を主として、上半身の限られた筋肉の持久力が最も重要となりますが、ランニングやバイクマシンのエクササイズを行っても、これら上半身の筋肉における適応はあまり期待できないということです。

心拍出量の向上(求心性肥大と遠心性肥大)

ライミングにも関係のある適応としては、心肺系の機能向上が重要です。有酸素機構によるエネルギー代謝においては、運動する筋細胞へは血流を通した酸素の供給や老廃物の除去が行われます。有酸素運動を行うことにより、心拍出量(1分間のうちに心臓から全身に送り出される血液の量)が大きくなります。

心拍出量の向上には2つの種類があります。一つは一回拍出量の向上です。これは、血流を送り出す心臓の心室の容量が大きくなる適応(遠心性肥大)により、心臓の一回の拍動で送り出される血流が大きくなるものです。これにより、運動中も低い心拍数を維持して長時間動き続けることができるようになります。この適応はロングスローディスタンスタイプの有酸素運動によりもたらされます。

もう一つは、一拍ごとの心臓の収縮力が高まる適応です。この適応では左心室の容量は変化しませんが、心室の筋肉の厚みが厚くなり(求心性肥大)、より速く心臓が収縮できるようになります。この適応は、心拍数が高い状態で恩恵があります。左心室に十分に新鮮な血液が満たされていない状態でも、素早く心臓が収縮できることにより、心拍数が高い状態でも多くの血液を全身に送り届けることができるようになります。これにより、心拍数が高い状態で長時間動き続けることができるようになります。この適応は、HIITやTabataトレーニングなど、強度の高い有酸素トレーニングによりもたらされます。

その他の効果

リラックス効果

有酸素運動は日常生活で発生するストレスの軽減に役立ちます。有酸素運動により、神経の興奮を和らげるセロトニンというホルモンが分泌され、ストレスを緩和する効果が 期待できます。

脂肪燃焼効果

有酸素機構による代謝は、糖分だけでなく脂肪もインプットになることから、有酸素運動は脂肪燃焼に直接つながる運動となります。

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有酸素機構の生化学反応全体像

有酸素運動を行うことにより、体のエネルギー不足が発生すると、脂肪が脂肪酸とグリセロールに分解され、運動中の筋細胞のミトコンドリアに運ばれてエネルギー源として使用されます。

リカバリー効果

いわゆるアクティブリカバリーの効果も期待できます。クライミングを行った翌日など、全く運動せずにレストするのではなく、会話が続けられる程度の有酸素運動を行うことで全身の血行を良くして回復を促進させます。

ただし、アクティブリカバリーの効果はそれほど大きくないようです。過去に行われた様々なリカバリー方法の研究文献を調査したメタアナリシスでは、マッサージや温冷浴に比べてアクティブリカバリーの効果は小さかったという結果となっています。

An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis

一般的な有酸素運動はクライミングレーニングに必要か

いろんな意見があり、一定のコンセンサスはない状況です。そのため、結論は取り立てて述べないこととし、推奨・非推奨それぞれの意見を列挙します。

時間があれば、やればいいという意見

www.hoopersbeta.com

カリフォルニアの理学療法士Jason Hooperは、ランニング等の有酸素運動によるメリットを認めつつ、クライミングレーニングという観点では時間効率がよくないことや、メリットを享受する方法が有酸素運動以外にもあることから、時間がある人だけやればいいというスタンスです。

有酸素運動を行う時間を捻出する必要がある

フルタイムクライマーではない、レジャーとしてクライミングを楽しんでいるクライマーであれば、毎日の仕事、通勤、食事、睡眠などに忙殺されながら、なんとか週に数回、ジムや岩場でのクライミングの時間を確保しているのが現実ではないでしょうか。更に週に数回、30分から90分程度の継続した有酸素運動を行う時間を捻出するのは大変です。

リカバリーに必要な時間やリソースを消費する

では、もし時間が十分に確保できるとしたら、一般的な有酸素運動を行う方がよいかと言えば、必ずしもそうとは言えません。クライミングのトレーニングは、その刺激に体が適応して超回復するために、十分な休養と栄養補給を必要とします。一般的な有酸素運動は、それ自身の運動刺激からの回復のために、休養時間と栄養補給を必要とすることから、ライミングレーニングの回復に使いたい有限のリソースが奪われてしまうことを考慮する必要があります。

一般的な有酸素運動はクライミング能力の向上に直接は結びつかない

一般的な有酸素運動レーニングにより、クライミング中のパンプや指の開きを抑制できるなどの効果があるのであれば、他の活動の時間を削って一般的な有酸素運動の時間を捻出する価値はあります。しかし、必ずしもその効果は期待できません。一般的な有酸素運動により期待できる身体的なトレーニング効果は、上に記載したとおり、心拍出量の向上を除いて、ライミングで持久力が必要となる筋肉群に寄与しません

体重減少には有酸素運動以外にもやり方がある

体重減少の効果についてはどうでしょうか。有酸素運動は確かに脂肪燃焼により体重減少につながる効果がありますが、それ以外のやり方でも体重を減らすことは可能です。

ダイエットの基本は「消費カロリー>摂取カロリー」ですので、30分程度のランニングをすることと、おにぎり1個を我慢することは、体重減少に向けた効果という意味では同じです。

また、クライミングのような無酸素的な高強度運動にも、体重減少に対する効果はあります。運動そのものによる脂肪燃焼は有酸素運動にはかないませんが、筋肉量の増加に伴う基礎代謝の向上や、アフターバーン効果と呼ばれる筋トレ後24時間の代謝率向上が期待できます。

適切にトレーニングに取り入れるべきという意見

一方、Eric HörstやSteve Bechtelは、クライミングレーニングの主役ではなくメニューの一部として、一般的な有酸素運動を取り入れることにメリットはあるという考えです。その論拠を確認していきましょう。

効率的な心肺機能向上

上に述べたとおり、一般的な有酸素運動では、ローカルエンデュアランス系のトレーニングのような前腕筋付近の適応は期待できませんが、心肺機能の向上は期待できます。ローカルエンデュアランス系のトレーニングでも心肺機能の向上に効果はありますが、より効率的な方法として、持久系トレーニング期の前半に、一般的な有酸素運動を週に1~3回行うことを、Steve Bechtelは推奨しています。

この際に、遠心性肥大をもたらすようなロングスローディスタンスタイプの運動強度とすることがポイントです。ライミングの特徴は、最大心拍数付近で長時間動き続けるような運動ではないということに注意が必要です。求心性肥大のような、短い間隔で強力に収縮して血流を発生させるような心肺機能はクライミングには不要であり、遠心性肥大により一回拍出量を大きくして、クライミング中にできるだけ低い心拍数で動き続けられるようにすることを目的とします。

回復力の向上

一般的な有酸素運動は、クライミング中の持久力の向上に対する直接的な効果は少ないと上で述べましたが、トライ間のレスト時における回復力の向上は期待できます。ハードなクライミングによって前腕に蓄積された乳酸と水素イオンは、細胞外の毛細血管から血流に入り、他の筋肉で有酸素的に代謝されてエネルギーに変わります

一般的な有酸素運動は、足腰や背中の大きな筋肉の代謝力を向上させることができ、トライ間のレスト時における速やかなエネルギー回復に役立ちます。

一般的な有酸素運動の量的な目安

クライマーが一般的な有酸素運動を行う場合は、Steve Bechtel、Eric Hörstともに、ランニングであれば週に2〜3回、1回あたり数十分を推奨しています。強度は会話ができる程度(心拍数で120〜150/分程度)を維持するようにしましょう。

まとめ

  • クライマーが一般的な有酸素運動を行うならば、クライミングを行う時間を犠牲にしない範囲で行うようにする。
  • 一般的な有酸素運動は、心肺機能の向上によるクライミング中の心拍数低下、全身の代謝機能向上によるトライ間の回復力向上が期待できる。
  • 頻度は週に2〜3回、1回数十分、強度は会話ができる程度(心拍数で120〜150/分程度)を維持するようにする

いろいろ書きましたが、まとめるとこんなところです。一般的な有酸素運動は、クライミングレーニングとしては優先度は低いものの一定の効果は期待できるので、時間を捻出できる方はトレーニングプランに組み込んでもよいのではないでしょうか。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。

参考文献

求心性肥大と遠心性肥大

 有酸素性持久力 – Strong Genius

エネルギーシステムトレーニング(有酸素機構Vol.2)

有酸素機構のエネルギーシステムトレーニングについて、前回は体内での生化学的なメカニズムを紹介しました。今回はそのメカニズムをふまえた、最適なクライミングレーニングの方法論を紹介します。

有酸素機構のトレーニングとしては、クライミング に即したトレーニングと一般的なランニング・水泳などの有酸素運動があります。今回は、ライミングに即したトレーニング(ローカル・エンデュアランス)を紹介し、次回は一般的な有酸素運動の効果や必要性について確認していきます。

 

前回までの記事は以下を参照ください。

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(全体像) - May the friction be with you!

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(ATP-CP機構 vol.1) - May the friction be with you!

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(ATP-CP機構 vol.2) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構vol.1) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構vol.2) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構Vol.3) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(有酸素機構Vol.1) - May the friction be with you!

 

今回の記事は、前回紹介した以下のEric HörstのPodcastの内容に加え、アメリカでClimbStrongというクライミングコーチ集団を率いているSteve Bechtelの記事を参考に記載しています。

trainingforclimbing.libsyn.com

 

www.climbstrong.com

 

ライミングレーニングにより得られる有酸素機構の適応

前回、有酸素機構の生化学的なメカニズム観点で、トレーニングを行って強化すべきポイントを3点挙げました。

  • 有酸素機構の代謝反応は、多くの酵素が促進している
  • 有酸素機構の代謝反応は、筋細胞内のミトコンドリアで進行する
  • 反応に必要な酸素は血液中から取り込む

それぞれについて、トレーニングによりどのような適応(能力の向上)が見られるかを、まず確認していきます。

冒頭述べたように、今回はクライミングに即した適応を確認していきます。ライミングで最も疲労しやすい筋肉は前腕にある指屈筋で、指を曲げる筋肉になります。その局所的(ローカル)な筋細胞の近辺で起きる持久的(エンデュアランス)な適応がターゲットになります。

酵素の活性化

有酸素機構の代謝反応には様々な酵素が介在しています。これらの酵素のうち、代謝反応を促進できる活性状態にある酵素の量が増える事で、エネルギー産生能力を高める事が可能です。活性状態にある酵素の量はトレーニングにより増やす事ができます

ミトコンドリア量の増量と活性化

前回のブログ記事でも述べたとおり、筋細胞の種類(遅筋のtype1、速筋のtype2a・type2b)によってミトコンドリア量は異なっており、有酸素機構によるエネルギー産生の能力もミトコンドリア量に従います。遅筋のtype1と、速筋のtype2aのミトコンドリア量は、トレーニングによって増やすことが可能です。

余談ですが、ミトコンドリアは酸性状態では活性が低下します。ルートクライミングで、ウォームアップ不足の状態でハードルートにトライしてひどくパンプしてしまうとなかなか回復しないのは、筋細胞内に急激に蓄積した水素イオンにより、ミトコンドリアの活性が低下することが影響しているのです。

毛細血管ネットワークの発達

有酸素機構の代謝に必要となる酸素と栄養素は、筋細胞の近辺に張り巡らされた毛細血管から拡散されることで、筋細胞のミトコンドリアに取り込まれます。レーニングによって、新たな毛細血管が生まれ、より高密度に張り巡らされることで、毛細血管とミトコンドリアの距離が縮まり、ミトコンドリアが効率的に酸素と栄養素を取り込む事ができるようになります(以下参考URL)。

How to Boost Performance and Recovery by Increasing Capillary Density | The Beachbody Blog

レーニング刺激と適応の関係

有酸素機構を強化するトレーニング刺激の分類

レーニング刺激としては大きく2種類に分かれます。

  1. 所謂有酸素運動のイメージに近い、パンプしないレベルの穏やかなクライミングを長時間続ける(Long Slow Distanceタイプ
  2. 短時間(10~30秒程度)の高強度クライミングを、数十秒のレストを挟んで繰り返す(インターバルトレーニングタイプ)

2は無酸素運動では、と感じるかもしれませんが、数十秒のレストの時間が適応の鍵となります。高強度のクライミングで消費したクレアチンリン酸の回復や、発生した水素イオンの除去を、レスト時間に有酸素機構による活発な代謝が繰り返し行われることで、有酸素機構の適応が起こり強化されていきます

先に挙げた「酵素の活性化」「ミトコンドリア量の増量と活性化」「毛細血管ネットワークの発達」は、Long Slow Distanceタイプとインターバルトレーニングタイプ両方のトレーニング刺激に反応して適応します。どちらのトレーニング刺激が効果が高いのかについては、多くの研究が行われているようです。

例えば、「毛細血管ネットワークの発達」については、Long Slow Distanceタイプは遅筋type1筋細胞近辺の毛細血管をよく発達させるのに対し、インターバルトレーニングタイプは速筋type2a筋細胞近辺の毛細血管により効果的なようです。

適応に必要なスピード

先に挙げた3つの適応は、トレーニングに対する反応のスピードに違いがあります。

酵素の活性化」「ミトコンドリアの増量と活性化」は、比較的短期間(数週間程度)のトレーニングで最適化されます。逆に言うと、数週間以上トレーニングしても頭打ちになるということです。そして、レーニングをやめると、同じくらいの短い期間で効果が無くなっていきます

一方、「毛細血管ネットワークの発達」は、トレーニングの効果がすぐには出ませんが、長期間かけて発達したネットワークはトレーニング効果も長期間持続します。

これらの適応スピードを考慮すると、例えばボルダーに一時期集中していたとして、ルートクライミングに移行する時に、数週間集中的に持久系のトレーニングを行うことは、単なる付け焼き刃ではなく、意味のあるトレーニングと言えます。酵素ミトコンドリアの適応により、相応の持久力の向上が見込めるためです。しかし、毛細血管ネットワークの適応は時間がかかるので、その点においては、数週間の持久系トレーニングではポテンシャルを解放しきれておらず、更なる伸び代があると理解しておくとよいでしょう。

有酸素機構を鍛えるトレーニング手法

前置きが長くなりましたが、具体的にクライミングに即した有酸素機構を鍛えるトレーニング方法を見ていきます。

ARCトレーニン

ARCは、最近復刊されたパフォーマンスロッククライミングで紹介されたトレーニングで、クライミングの有酸素トレーニングといえばまずこれが思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。ARCは、Aerobic Restoration and Capillarityの頭文字をつなげたもので、有酸素性エネルギー回復と毛細血行を表します。クライミングに関係ない一般的なトレーニング用語かと思ったら、パフォーマンスロッククライミングが初出の造語のようです。

 

 

これは、血流を阻害しないような軽い負荷のクライミングを数十分継続するトレーニングです。ルートグレードでいうと、限界グレードから数字で3〜4グレード下のルートを休まずに登り続けるイメージになります。5.13aが限界グレードなら、5.10aや5.9です。登り終わってもパンプはしておらず、腕全体がうっすら温かくなり、血行がよくなっているのがわかります。

スレッショルドインターバル

Eric Hörstは、ARCトレーニングは初心者・初級者にはよいトレーニングだが、持久系トレーニングを継続している中級者には効果が少ないと考えているようです。そのような場合、もう少し負荷の大きいスレッショルドインターバルというトレーニングを推奨しています。

ここでいうスレッショルド閾値)は、乳酸性閾値(anaerobic threshold=AT)を指しています。ATは乳酸が溜まり始める運動強度です。低強度のクライミングでは、解糖系で生成されたピルビン酸と水素イオンは全て有酸素機構で消費されます。しかし、徐々に強度を上げていくと、ある一定の強度のところで、有酸素機構での消費速度よりも早く解糖系でピルビン酸と水素イオンが生成されるようになります。すると、ピルビン酸と水素イオンがLDHAにより乳酸になる反応が進むようになり、筋細胞内に乳酸が溜まり始めます。この時の運動強度がATです。

スレッショルドインターバルは、ATの強度で3分登って3分レストを6回程度繰り返します。Long Slow Distanceタイプとインターバルトレーニングタイプのちょうど中間くらいのイメージです。レストのタイミングで、老廃物除去とエネルギー産生のためにミトコンドリアが活発に活動することで、有酸素機構が強化されます。

このトレーニングはATの強度見極めが難しいです。目安としては、激しく痛みを感じるようなパンプはやり過ぎ、ほんの軽くパンプする程度だと負荷が軽過ぎ、その間の中程度のパンプが目標になります。

高強度インターバル

上級者向けの有酸素機構トレーニングとして、高強度インターバルも紹介します。これは10秒から20秒程度の高強度クライミングと数十秒のレストを繰り返すものです。

ここで言う高強度は、保持力ではなくハイパワーであり、つまりハイスピードがポイントになります。一手一手をリズムよく出していき、ホールドから手が離れている時間をできるだけ少なくして、登ってる間は有酸素機構による回復が起こらないようにします。キャンパスボードでもよいですし、ボルダーであれば、単純なムーブで、カチならカチ、ピンチならピンチと、似たようなグリップのホールドが続く6手くらいの課題がよいです。スピードが出せないような目一杯保持する必要があるホールドだと負荷が強過ぎるでしょう。

上記の短時間でハイパワーなクライミングではATP-CP機構が主役となり、筋細胞内のクレアチンリン酸が枯渇します。45秒程度のレストで、有酸素機構によりクレアチンリン酸は75%程度回復するので、完全回復しないうちにセットを繰り返すことで、有酸素機構をフル稼働させて強化します。ミトコンドリアの増量と活性化に効果的です。

不十分な回復状態で次のセットを始めるのが大事なので、レスト時間は長くならないようにきちんとタイマーで測るようにします。クライミングとレストを合計して1分として、1分毎にブザーが鳴るインターバルタイマーを利用するのが効率的です。

ATP-CP機構と有酸素機構の繰り返しなので、パンプは殆どしません。パンプしたら適切な負荷となっていないので調節しましょう。

まとめ

次回は有酸素機構のしめくくりとして、ランニングや水泳などの一般的な有酸素運動について、効果や必要性を確認していきます。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。

その他の参考文献

具体的なトレーニングメソッドは、Eric Hörstの以下書籍に詳しいです。

Training for Climbing: The Definitive Guide to Improving Your Performance (How to Climb)

Training for Climbing: The Definitive Guide to Improving Your Performance (How to Climb)

  • 作者:Horst, Eric J.
  • 発売日: 2016/07/15
  • メディア: ペーパーバック
 

 

エネルギーシステムトレーニング(有酸素機構Vol.1)

前回までに、ATP-CP機構、乳酸性機構のエネルギーシステムトレーニングを見てきました。今回は最後の機構として、有酸素機構を紹介します。

運動を有酸素運動無酸素運動に分けると、クライミングは瞬発的な要素も多く、無酸素運動のイメージが強いです。しかし、有酸素機構は瞬発的な運動で消費したエネルギーのレストによる回復に大きく寄与していることから、高い有酸素能力は、ルートクライマーはもちろんボルダラーにも資する能力となります。

今回は体内での生化学的なメカニズムを確認し、次回はメカニズムをふまえた最適なトレーニングの方法論を紹介予定です。

 

前回までの記事は以下を参照ください。

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(全体像) - May the friction be with you!

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(ATP-CP機構 vol.1) - May the friction be with you!

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(ATP-CP機構 vol.2) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構vol.1) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構vol.2) - May the friction be with you!

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構Vol.3) - May the friction be with you!

 

今回の記事もEric HörstのPodcastの内容を咀嚼してまとめたものになります。生化学の単語が聞き慣れない事を除けば、発音が明瞭で聞き取りやすい英語なので、興味のある方は聞いてみてください。

trainingforclimbing.libsyn.com

 

エネルギーシステムにおける有酸素機構の位置づけ(おさらい)

エネルギーシステム間の関係性

有酸素機構は、生体内のエネルギー生成経路の中で、有酸素状態で働く機構であり、安静時や穏やかな運動時に主役となって活躍します。

筋肉が行える最大強度の収縮を100%として、50%以上の強度で筋肉が収縮すると、筋細胞の周囲の毛細血管が圧迫され、血流を通じた酸素供給がほぼなくなります。このような無酸素の状態ではATP-CP機構や乳酸性機構でエネルギー生成を行います。逆に、50%以下の強度であれば、多少なりとも有酸素機構がエネルギー生成に寄与しています。

ライミングにおいては、ルートの核心部やボルダーの瞬発的な動きを行う際には50%以上の強度でホールドを保持するため、ATP-CP機構や乳酸性機構により素早くATPを生産します。しかし、ATP‐CP機構は燃料源であるクレアチンリン酸が減少するに伴って、乳酸性機構は老廃物である水素イオンの量が増えるに従って、それぞれの機構でのエネルギー生産ができなくなっていきます。 

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エネルギーシステム間の関係性

 

上の表に記載の通り、有酸素機構はATPを生産すると同時に、ATP-CP機構や乳酸性機構をストップする原因を取り除く役割を有しています。つまり、ライミングにおける有酸素機構の重要な役割は、瞬発的なエネルギー生成機構であるATP-CP機構・乳酸性機構のリカバリーを促進することであるということです。

ライミング はStop&Goアクティビティ

少しクライミングという運動の特性を考えてみます。Eric Hörstは、クライミングの特徴は「Stop&Goアクティビティ」であることと言っています。例えば100メートル競走は、できる限り最大筋力で走り続ける競技です。またマラソンは42.195キロという長い距離を、ばてない範囲でできるだけ早く走り続ける競技です。一方、クライミングは、総体的に見れば登り続けていても、その過程においては、体の各部位は運動とレストを繰り返しています

例えばホールドを保持する手を考えてみると、右手と左手のどちらか一方でホールドを保持して、もう片方の手は次のホールドを目指して動いている時間が多くあります。この間、次のホールドを目指している手は、保持するための力を発揮しておらず、有酸素機構によるエネルギー生産や老廃物の除去ができる状態になっています。

このような運動の特性を考慮すると、以下の2点が、有酸素機構の重要な役割となります。

  1. ライミング中における、保持力の回復
  2. 次のルートをトライするまでの間のエネルギーの回復・老廃物の除去

ライミング中であれば、ルートの核心部などで力を出し切って、そのままだとホールドを保持する力が枯渇して指が開きフォールしてしまうような状況でも、そうならないようにちょっとだけでもシェイクしたりすることで、1手や2手だけでも再び瞬発的な動きができるように保持力を回復させます。

次のルートをトライするまでの間であれば、ルートやボルダーのトライで前腕に老廃物(クレアチンリン酸、水素イオン等)が蓄積したままだと、ATP-CP機構・乳酸性機構が十分に働くことができず、爆発的なパワーを必要とするムーブがこなせないようなことが起こりえます。こちらも、そうならないように、レストしている間に有酸素機構が働いてエネルギー生産と老廃物の除去を行います。例えば、ボルダーコンペなど、5分間の持ち時間以内で複数回トライするような際には、次のトライまでにできる限り爆発的な動きができるように回復する必要があり、トレーニングされた有酸素機構が役に立ちます。

無酸素運動の印象が強いクライミングであっても、有酸素機構は大事な役割を有しています。そのため、有酸素機構を強くするトレーニングはおろそかにできないのです。例えば、ATP-CP機構で消費したATPは、通常は1分程度のレストで2/3程度回復すると言われていますが、トレーニングによって30秒程度のレストで同じレベルまで回復することも可能です。

有酸素機構の生化学的なメカニズム

有酸素機構のトレーニングによって目指す適応のポイント

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有酸素機構の生化学反応全体像


有酸素機構は、生化学的には、TCA回路と電子伝達系という複雑な反応によって成り立っていますが、その内容を知っておく必要はありません。クライミング のトレーニング観点で知っておくべきポイントは、以下5点くらいです。

  • 乳酸性機構で生成されたピルビン酸と水素イオンがインプットになる
  • 体脂肪が分解されてできる脂肪酸もインプットになる
  • 有酸素機構の代謝反応は、多くの酵素が促進している
  • 有酸素機構の代謝反応は、筋細胞内のミトコンドリアで進行する
  • 反応に必要な酸素は血液中から取り込む

特に最後の3つが重要です。有酸素機構のトレーニングは、この3つを考慮して、

  • 有酸素機構の代謝反応に関わる酵素を活性化する
  • 筋細胞内のミトコンドリア数を増やす、活性化する
  • 筋細胞に届く酸素量を増やすため、心肺機能や血管ネットワークの改善

といったことを効率的に実現できるメニューを考えていくことになります。

筋細胞(筋線維)のタイプによる違い

筋細胞(筋線維)のタイプは、持久的運動に適している遅筋(Type1)と、瞬発的な運動に適している速筋(Type2)に分かれます。速筋はさらに、やや持久的運動に適したType2aと、そうではないType2X、Type2bに分かれます。

これら筋持久的運動の適正が異なるのはいくつか理由がありますが、最も重要な点は、各々の筋線維が有するミトコンドリア量が異なることです。遅筋は筋細胞のおよそ20%をミトコンドリアが占めています。一方速筋では、Type2aで4〜5%、Type2bで2%程度となっています。

重要なのは、速筋のType2bは、トレーニングによって10〜12%までミトコンドリア量を増やすことが可能ということです。ミトコンドリア量の観点では速筋Type2aの持久的能力を高めることがターゲットになります。

まとめ

  • 有酸素機構は、瞬発的なエネルギー代謝(ATP-CP機構、乳酸系機構)のリカバリーを促進する
  • ライミング中 においては、ムーブ間のホールドを握っていない時間において、有酸素機構によるエネルギー回復と老廃物除去により、瞬発的な動きを継続する
  • ライミング 間のレストにおいては、有酸素機構によるエネルギー回復と老廃物除去により、次のトライ開始までに瞬発的な動きができるように回復する
  • 有酸素機構のトレーニングは、有酸素機構に関わる酵素ミトコンドリア、酸素を運ぶ血管系のそれぞれをターゲットに行う

次回は、具体的なトレーニングのやり方について書いていきます。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。

2020年9月のリハビリとクライミング

左右中指の関節炎リハビリを始めてから1ヶ月強が経ちました。三歩進んで二歩下がるような状況ですが、少しずつ前に進みながら、クライミングも再開しています。 

リハビリの状況

8月下旬にリハビリを開始。病院での施術やセルフでできる対処などを行い、3週間ほどクライミングはレストしました。施術の内容や効果などは、リハビリ完了後に機を改めて評価したいと思います。

レスト後に、少しづつ指に負荷をかけ始めました。始めてから感じたのは、思ったより回復には時間がかかりそうだという事でした。

写真のようにプーリー(滑車)を介して、18mmのエッジで少しづつ負荷をかけたところ、8.75kgで左手側に痛みが出ました(片手オープンハンド、3本指、30秒)。痛みと言ってもシャープな痛みではなく、最も痛いと感じた時の痛みを10としたら、1か2程度の痛みですが、この負荷で痛みが出ている以上、痛みが出なくなるまでは負荷を上げずに体を慣らす必要があります。

通常のクライミングにおいては、18mm程度のエッジであれば、片手で3〜40kgの負荷がかかるシーンはザラにあるので、だいぶ先は長い印象です。前回立てたピリオダイゼーション計画も、一旦保留にして、リハビリを最優先にすることにしました。

 

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グラフが下降しているところが、痛みが出てセットバックしたところです。30秒程度の負荷と十分なレストにより、腱・靭帯組織の肥大化が期待できるので、30秒保持できない負荷量になるまでは、このやり方で徐々に負荷を増やしていくつもりです。

2020年9月のクライミング

まだクライミングジム通いも再開してないですが、月末(9/29)になって、岩には一度だけ行きました。岩なら、ハンドサイズ以上のクラックであれば、指に負荷をかけずにそれなりにクライミングができますし、ノーハンドスラブなどでも遊べます。

ということで、ピラニアオーナーの山森さんこーへーさんが素敵なクラック課題を開拓しているエリアでクラックボルダリングを楽しんできました。

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左の「阿片窟の男」はクラックにチョックストーンと流木が詰まっていて、手持ちのナッツキー一本では掘り出せずに断念。右のつるつるワイド「遥」にチャレンジしました(課題名の素敵な由来はこちらのブログエントリーを参照)。

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「遥」は下向きのフレアワイドで、手も足も出ませんでした。何とか挟まることはできるものの、動こうとすると体が吐き出される感じで、ワイドのテクニックがかなり求められそうです。宿題。

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上はアプローチシューズで登れる階段状のワイド。舐めて登ってたら抜け口のチョックストーンがグラっときてひやひやしました。手が容易に離せるので、リービテーションの練習にもいいです。

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上は「正統派」という名前のワイド。今まであまり使ったことのなかったチキンウィングが自然に使えて、いい練習になりました。右向きで登りましたが、左向きでもいけるようなので、またやってみたいところです。

10月以降の展望

ピリオダイゼーション計画の修正

当初の計画では10月からビルドアップ/マックスパワーのトレーニングに入ることを考えていましたが、十分なリハビリが必要と判断して、計画は一旦ご破算にします。最大負荷をかけても指に痛みが出ないようになるまではリハビリを継続するつもりです。

 

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岩場でのクライミングはワイドクラックと向き合う

2020年の秋は、指のリハビリに注力しつつ、岩ではワイドクラックと向き合あうことにします。せっかくなので、Pete Whitteker著「CRACK CLIMBING」のオフイドゥスの章を読み直して、記載されているテクニックを色々と試してみたいところです。

 

Crack Climbing: Mastering the skills & techniques

Crack Climbing: Mastering the skills & techniques

  • 作者:Whittaker, Pete
  • 発売日: 2020/01/15
  • メディア: ペーパーバック
 

 

「CRACK CLIMBING」は、Rock&Snow No.089の書評で中嶋渉さんが触れている通り、「読者が必要なテクニックを探して読みやすい構成になって」います。今回のようにオフウィドゥスの課題に行き詰まった時に該当の章を読めば、実践に活かせる気づきがあるはずです。

例えば、オフイドゥスのムーブについては「CRACK CLIMBING」P.167〜に、以下のように記されています。

もし1分あたり1インチ(2.54センチ)しか進んでいないとしたら、何かが激しく間違っている。

(中略)

よくある誤りは、上に進む推進力を得るために、クラックの内側にある体のパーツを使おうとすることだ。クラックの内側にある体のパーツに集中し過ぎて、上に進む推進力を生む最も重要な体のパーツを忘れてしまう。それは外側の脚/足だ。

 

(以上 管理人超訳

これを読んだ後で「遥」でのクライミングを思い返してみると、クラックの内側にある左手をよいジャミングポイントに決めて、それに頼って体を強引に引き上げようとすることに躍起になっていました。しかし、クラックの外側は腕も足もしっかり固定できていないので、体が吐き出されて落ちていたように思います。次回は「外側の腕と足の固定」と「外側の足で推進力を得る」を意識して試してみます。

 

また、その他いろいろワイドクラックボルダーにチャレンジしたいので、よい割れ目があれば是非教えてください。

Latticeのハングボードを購入/設置した話(Lattice Testing & Training Rung)

今回は管理人の自宅に新しいフィンガーボード(Lattice Testing & Training Rung)を設置したので、そのノウハウを紹介します。といっても、今回は、壁に直接穴を空けて据え付けていますので、賃貸住宅等で壁に穴を空けられない場合の参考にはなりません。そのような場合の設置方法は、以下の記事を参考にいただいたほうが良いです。

自宅の壁に穴を開けずに、クライミングのフィンガーボードを設置した | Mickipedia ミキペディア

ローリーバー(Rolly Bar)、Beastmaker2000設置 - やまーんの箕面ボルダリング日記

管理人の自宅には既にBeatmaker2000が据え付けてあり、自宅に2つもフィンガーボード付ける必要があるのかと自分でも呆れますが、Lattice Testing & Training RungはBeastmakerとは少し使い方が違うので、そのあたりを紹介したいと思います。 

Lattice Training Rungの特徴

負荷は指にかかる荷重だけで調整する

一般的なハングボードは、多様なホールディングのトレーニングができるように、一本指ポケット、二本指ポケット、浅いホールド、深いホールド、スローパー、ガバなど、限られたサイズのボードにたくさんのホールドがちりばめられています。

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一般的なフィンガーボードの例(Beastmaker2000)

それに対し、Lattice Testing & Training Rungは極めてシンプルな作りをしています。横方向の上段にガバのレールが一本と、下段に2cm厚のフラットホールドのレールが一本、これだけです。

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このようなシンプルな作りになっているのは、トレーニング刺激を変化させるための考え方が、一般的なフィンガーボードと異なっているためです。

Lattice Testing & Traing Rungを使用したトレーニングを行う際に、合わせて使用するのが望ましいものがプーリーシステムです。プーリーとは滑車の事です。プーリーシステムを使用して、指にかかる負荷を細かく調整します。


Lattice Training: Fingerboard Routines

例えば、10秒ぶら下がるのが限界くらいの負荷を指にかけたい時に、体重そのままでぶら下がると3秒しかぶら下がれないというような時、ハーネスを装着してプーリーを介して重りをぶら下げる事で、体を上方向に引き上げる補助力を得ることができます。(反対に負荷を増やしたいときは、プーリーを使わず、ただハーネスに重りをぶら下げるだけです。)このように、ポケットの幅やホールドの奥行きは一切変化させず、指にかかる荷重だけを変化させるのがLattice Testing & Training Rungの考え方です。

このような負荷調整方法のメリットは、調整するパラメーター(変数)が指にかかる荷重のみとなるので、多数のクライマー間でデータの比較評価がしやすいことと考えられます。データドリブンなクライミングトレーニング(Lattice Training) - May the friction be with you! で述べた通り、シンプルな測定方式を標準化して世界中から様々なクライマーの基礎数値(身長、体重、性別、クライミンググレード、保持力)を収集し、解析結果をLattice Training社が提供するトレーニングサービスのバッググラウンドデータとして活用することで、最適なトレーニングプランを提供することを目標としているのです。

Lattice Trainingが提供するアセスメントは、Lattice Testing & Training Rungを使用することが前提となってます。指が治ったら管理人も挑戦してみようと思います。

保持面のサイズ

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Lattice Training Rungの保持面サイズ

保持面のサイズは、製品サイトでは20mmと、なってますが、上図の通り、アールの先端まで込みで20mmとなってますので、フラット面は10mm程度です。そのため、20mmエッジという割には、かなり保持感は悪い印象です。アールの半径10mmというのは、Beastmakerよりもかなり大きく、角が当たることによる指の腹側痛みは殆ど感じません。

なお、Beastmakerのアールは数mmですが、普通に使う分には全く気になりません。敢えて、Lattice Testing & Training RungがBeastmakerより大きくアール半径をとっている理由は、指皮のコンディション等に測定結果が影響を受けるのを少しでも避けるためのようです。LatticeのデータアナリストRemus KnowlesとLatticeの共同創始者であるTom Randallは、Lattice Testing & Training Rungの開発時に、エッジの立ち具合によっては、指皮のコンディションが良くない時には想定より短い時間しかぶら下がれないといった事象があり、最適なエッジのアールサイズを調整したといったような話を、対談で語っています。


Lattice Training Podcast Ep. 1 - Remus Knowles

 
購入方法

売店

2020年9月現在、日本国内で販売代理店は無いようですので、個人輸入することになります。Lattice Coaching & Trainingのページから以前は直販できたのですが、なぜか対象商品に表示されなくなっているので、管理人はEpicTV shopから購入しました。

本体の値段

43.75£(ポンド)で、今のレートで6000円くらいです。Beastmakerは1000も2000も80£(≒11000円)ですので、作りがシンプルな分Lattice Training Rungの方がかなり安い値段になってます。

送料/期間等

9/2(水)に注文して、9/7(月)には受け取り可能になり、配送日変更して9/9(水)に無事受け取りました。特に急ぎ指定等はしていませんが、EpivTVは基本はDHL社の航空便になるようです。配送料は13.44£(ポンド)なので、今のレートで1800円ちょいくらいといったところですね。

設置について

設置場所

設置場所は、クライミングホールドを取りつけている傾斜天井の側面垂壁です。ここも構造合板が貼ってあればよかったんですが、残念ながら石膏ボードの上にクロス張りです。そのため、下地チェッカーで石膏ボードの裏に柱がある場所を確認して設置しました。

 

 

Lattice Training Rungは6点をビス止めするようになっており、下穴が空けてあります。しかし、今回は柱の位置が少しだけ下穴位置からずれている場所に設置したかったので、苦肉の策で、Rungに2か所新たに穴を空けました。強度的には、下穴の位置で固定した方が望ましいんでしょうが、ぶら下がってみた感じは問題なさそうなので、当面この状態で運用してみるつもりです。

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実際の設置位置

設置にあたっての注意点

指にかかる負荷を調整するため、プーリーをセットできる支点は、Lattice Testing Training Rungのちょうど真ん中から真下に設置するのが望ましいです。両手でぶら下がって、プーリーを介して負荷を調整した際に、プーリーの位置が左右に偏っていると、体がその向きに引っ張られて、フォームが崩れるのと、指にかかる負荷が微妙に左右均等にならないためです。今回は、プーリー設置用のカラビナが既にあり、その位置とビス位置の関係上、真ん中から真下に設置することができませんでした。機会があったら、改良したいところです。

 

(2020/9/26追記)

壁裏の柱位置を確認すると、右端に柱があったので、先にワンバイ材を設置してからLattice Testing Training Rungを設置するように改良しました。これで、両手でぶら下がる際に、体の真ん中にプーリーが来るように位置を調整することができました。

同時に、ラングをノコギリでカットして、 ワイドレンジで懸垂できる幅の位置にもラングを設置しました。どこで切っても形状が同じだし、材料が木で簡単に加工できるので、いろいろ工夫できますね。

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