クライミングフィルム Rampageの紹介

新型コロナウィルス(covid-19)の感染拡大を受けてstay homeを推奨・促進する意味もこめてと思いますが、過去のクライミングフィルムが続々と無料で公開されています。

その中で、REEL ROCKが公開したRampageは、管理人世代のクライマーは誰でも多かれ少なかれ影響を受けた衝撃的なフィルムでした。管理人もご多分に漏れず、Rampageを見たことでクライミング観が大きく変化しました。その受けた影響をこの機会に記してみます。


Rampage - Full Film with Chris Sharma

Rampageの紹介

Rampageは、クリス・シャーマとオービー・キャリオンを中心とした4人のメンバーが一台のキャンピングカーに乗り込んで、アメリカ大陸西海岸のボルダーエリアを登りまくるロードムービー仕立てのクライミングフィルムです。

コースはロサンゼルスからスタートして東進し、アリゾナ州をタッチしてから北上し、カナダのスコーミッシュまで辿ります。

  • Castle Rock キャッスルロック
  • Black Mountain ブラックマウンテン
  • Tramway トラムウェイ
  • Priest Draw
  • Lake Tahoe レイクタホ
  • Humboldt County Beach
  • Squamish スコーミッシュ

各ポイントをGoogle Map上でつなぐと、上図のようなルート概略になります。全長4500km程度で、北海道の宗谷岬から鹿児島の佐多岬までの道路距離2800km強よりも長いロードツアーです。(レイクタホの前にxgamesに参加してますが、場所がよくわからなかったので、ルートからは割愛してます。たぶんサンフランシスコの筈。。)

上に上げたクライミングエリアのうち、スコーミッシュはビッグウォールやトラッドクライミングで有名なので今でもよく有名クライマーの登攀記録を聞きますが、その他のエリアは聞き覚えのない人も多いんじゃないでしょうか。映像を見るとわかりますが、どのエリアも大きな岩がゴロゴロしているビッグエリアです。

自分達のとっておきのプロジェクトを嬉しそうに紹介するローカル達の表情が印象的です。ブラックマウンテンではグレッグ・ローが岩場を案内しながら、興奮を抑えきれずに「もっとプロジェクトがあるぞ!」とクリス達に告げます。クリス達はそれに応えるように、それらのプロジェクトを次々と初登していき、余りの強さにローカルクライマーも"Another future problem no longer in the future."と呆れてしまいます(未来の課題はもう残ってないよ、って感じですかね)。

フィルムのクライマックスは、ラストでスコーミッシュのV13課題をクリスが初登するシーンになりますが、個人的ハイライトはフィルムの中ほどでLake TahoeのAshtrayを初登するシーンです。今から見ると極端なハイボールではありませんが、存在感のある大きなハングしたボルダーでゴミのようなカチヘのデッドを止めるシーンは、当時ビギナーの管理人は度肝を抜かれました。そして、このプロジェクトを紹介したローカルクライマーは「この課題が登られるのを何年も待っていたんだ」と感動した表情を浮かべるのです。

自身のクライミングに与えた影響

ラインを自由に引く楽しさ

Rampageは自分がクライミングを始めて2年目の2000年に発売された映像作品です。初めて見たときに最も印象的に感じたのは、初めて相対した岩にラインを自由に引いていく楽しさが溢れている、ということでした。

当時の管理人のクライミングを振り返ると、何度かジムでのクライミングを経た後に、一緒にクライミングを始めた仲間となんとなく岩場で登るようになりました。岩場は主に御岳で、トポとして改版前の日本100岩場を持参してボルダリングをしていました。日本100岩場は、岩のイラスト上にフワッとラインが引かれ、課題を表現しています。このラインと実際の岩を見比べては、どのホールドからスタートしたらいいんだろうとか、この登り方だと右に行き過ぎかなとか、トポからは読み取れない如何ともし難い情報に悩みながら登っていました。各課題に初登者というのがいることは知っていましたが、特に意識することもなくトポ上の課題をトレースしていたのです。

Rampageのエンドロールを見るとわかりますが、クリス達が初登した課題の多くは課題名もなく(Unnamed)、グレードもありません(Ungraded)。そのやり方には当時賛否両論ありましたが、管理人はそこに、相対した岩との一期一会のコミュニケーションを楽しむ姿勢を感じました。彼らは、トポを見てラインを探して登るのではなく、岩を眺めて自分が登りたいと感じたラインを自由に登っていたであろうことは、想像に難くありません。

Rampageを見た後は、すぐにというわけではありませんが、先にあげたような課題のスタートホールドやラインについて思い悩むことが余り無くなっていきました。登る対象は変わらず既製の課題のトレースでしたが、その岩を自分で眺めてみて登りたいと思った登り方で登れれば、結果的に初登者の登り方と違ったとしても、岩と自分の関係性としては充分満足ができるようになったのです。

もちろん、岩登りのもう一つの楽しみ方として、岩と自分の関係性に閉じず、初登時のラインを知りトレースすることで初登者の経験を疑似体験することができるというタイムマシン的な要素もあります。管理人も、そのような楽しみ方は大好きですし、クラシックな課題では特に初登時のラインやムーブが気になって調べたりします。そんな時も、自分ならこう登りたいというラインを考え、初登者とのラインの見え方の違いに気づいて、その違いの理由を考えたりするのが楽しかったりします

ライミングツアーに対する憧れ

もうひとつ感じたことは、純粋にクライミングだけをやり続けるツアーに対する憧れの感情でした。東京近郊の岩場に閉じてクライミングを楽しんでいましたが、それだけではなく、長めの休みを取って関東圏外や海外へクライミングツアーに行きたいという思いが芽生えたきっかけだったと思います。

 管理人の初めての海外クライミングツアーは、2004年Rampageの最終地点であるスコーミッシュと、バンフ近辺のリードクライミングエリアを巡るものでした。スコーミッシュの2日目に足を捻挫して参りましたが、アイシングして騙し騙し、結局ほぼ毎日登り続けてました。

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Titanic(V3)この後、別の課題で華麗に捻挫。


また、2011年には、ブラックマウンテンにも行くことができました。このツアーでは、南カリフォルニアのボルダーエリア(ブリックヤード、パインマウンテン、ジョシュアツリー、ブラックマウンテン)をハシゴして、ロード感もたっぷり味わうことができて大満足のツアーでした。本当はRampageに出てくるトラムウェイも行くつもりだったのですが、ちょうどその時にトラム(ボルダーエリアまで上がるためのケーブルカー)が運休期間だったために行けなかったのは残念です。

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ブラックマウンテンのCenter Visor(V6)

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頼もしいスポッター

この後は結婚して子供もでき、海外ツアーには行ってませんが、また子育てが落ち着いてきたら、どこか行きたいなと思っています。なかなか新型コロナウィルスの真の収束は見通せない状況ですが、いつかはこの自粛状態も解消し、再び岩場でクライミングできるようになるはずですので、その時にはまた刺激的なクライミングツアーを企画します。トラムウェイには是非リベンジしたいところです。