疲れてくると肘が上がる理由(チキンウィング)

少し長いボルダリング課題であったり、ルートクライミングをやっているとき、疲れてきて落ちそうになってくると、肘が上がってくる経験はありませんか。この肘上がりですが、人間の体の構造上、故障に繋がりやすい動きと言われています。肘上がりが起きる理由と、防ぐために気をつけることを考察します。

肘上がり(チキンウィング chicken wing)とは

簡単のため、右手で真下方向に引けるホールドを保持する場合を考えます。肘が真下(ホールドを引ける方向と同じ)を向いているのが理想的な姿勢ですが、肘が右後ろ方向を向いてしまっている状態が肘上がりです。

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左が肘上がり(チキンウィング)

Injury-Free Movement for Rock Climbers | Climbing Magazine

この状態で体重がかかると、肩の腱板や肘の親指側の腱に負荷がかかります。このような動きを繰り返すことにより、腱が炎症を起こし、肩のインピンジメント症候群、テニス肘などの原因となりやすいと言われています。

肘上がりが起こる理由

手首の背屈と指の屈曲の関係

冒頭、クライミング中に疲れてくると肘上がりが起こると書きました。これが起きる理由は、人体の構造上、手首が背屈(手の甲側に曲がった状態)していた方が、指先に力が込めやすいからです。


Forearm Antagonist Muscle Training for Climbers

上の動画で紹介されていますが、試しに、手首を掌屈(手の平側に曲げた状態)させて人差し指指と親指をつまんでみてください。人差し指と親指はつまんだまま、手首を徐々に背屈させていくと、指先に力が入っていくのがわかると思います。

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力が入らない

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力が入る

もう一つ、動画のEric Hörstが著した「Training for climbing 3rd edition」に記載されている実験です。五本の指をまっすぐ伸ばした状態で、手首を背屈しても、あまり曲げられないと思います。次に指をリラックスさせた状態で手首を背屈すると、先ほどより手首が大きく曲がっていくと同時に、指先がどんどん曲がっていきます。

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指を伸ばすとあまり背屈しないが、、、

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指をリラックスすると背屈して指が曲がる

人体機能的なメカニズムは自分も説明できるほど詳しくないので省きますが、「手首を背屈した方が指が曲がりやすい」という関係性はなんとなく掴めるんじゃないかと思います。

肘上がりのメカニズム

改めて、クライミングで疲れてきた状態を思い起こしてみると、今にも疲れて落ちそうだが落ちたくないので、指先にできる限り力を込めたい状態です。人体の構造上、手首が背屈した方が指先に力が入るため、体は自然と手首を曲げる様に動きがちです。この際に脇が閉まった状態で手首が背屈すればよいのですが、脇が閉まっていないと、自然と肘が上がっていくことになるのです。

肘上がりを防ぐ対策

手首の安定性を上げる

指が疲れてくると手首を背屈したくなるわけですが、純粋な手首の動きだけではなく、脇が空いて肩が上がる動きの力も借りてしまうので、肘が上がってしまいます。肩が動かなくても手首が背屈できるように手首を安定させる筋トレを行う考え方です。

上にあげた動画内で提案されている2種類のエクササイズは、手首の背屈が重要となる2種類のホールディングにそれぞれ対応しています。

  • リバースリストカール

フルクリンプのように、第一関節、第二関節を曲げて保持するホールディングを模しています。ダンベルを掌を下にして持ち、手首を背屈します。20回程度繰り返すか、もしくは背屈した状態で1分保持するアイソメトリックトレーニングを行います。どちらを行うにしても、指定の回数、時間がちょうどやり切れる程度の重さに負荷を調整します。

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ダンベルはあまり場所を取らないので、自分は会社の昼休みにやってます。

  • ピンチブロック

厚いピンチホールドのような第一関節を伸ばして保持するホールディングを模しています。ピンチで保持できるホールドに重りをぶら下げて、1分程度保持するアイソメトリックトレーニングを行います。ピンチ力も鍛えられそうですが、目的は手首を背屈させる力のトレーニングです。

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脇を締める癖をつける

こちらはフィジカル面というよりはテクニカル、スキル面の改善です。肘上がりは疲れてきた時に顕在化しますが、そもそも疲れていない時のクライミングフォームから既に、脇が甘くなっていることが多いですので、癖を直す地道なフォーム練習をするということです。

このような基本的なフォームの練習は、疲れていない状態で、グレードを下げて行うことが重要です。なぜかというと、限界ギリギリのグレードではそのムーブをこなすのに精一杯で、フォームの精度を上げるところに意識を届かせることができないためです。

PUMPのクライマーズバイブルでは、持久力をつけるトレーニング期間であったり、1日のクライミング中のウォームアップのタイミングで、フォームの確認を行うことを推奨しています。漫然と体を温めるためだけに登るのではなく、一つ一つの動きを意識して登るのですが、足を丁寧におく、ボールドを何度も握りなおさないといったチェックポイントに、「脇を締める」も加えてみてください。

pump.ocnk.net

なお、脇を締めるの意味は、以下のリンクがイメージしやすいと思います。

脇を締めるの本当の意味 | 武術の極意で、勝つ!カラダになるHCMメソッド「研勢塾」下北沢

まとめ

  • 人体の構造上、クライミング中に指が疲れてくると肘が上がりやすい
  • 肘が上がった状態で登ることが常態化すると、肩や肘を故障しやすい
  • 手首の安定性を上げるため、リバースリストカールなどのトレーニングを行うとよい
  • 肘上がりの癖を直すため、易し目グレードの課題で脇を締めて登ることを意識する

といったところです。肘上がりが癖になっている方は参考にしてみてください。

参考

理解しきれていないので参考に記しますが、指を動かす筋肉の構造は以下のリンクが詳しいです。

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湯本整形外科、手外筋と手内筋

骨間筋が第一関節(MP関節)を曲げる働きを持っていますが、総指伸筋と拮抗していて、総指伸筋が緩んでいる(手首が背屈している)方が、第一関節は深く巻き込めると言えそうです。吉田クライミング日記でも少し言及されてます。

吉田クライミング日記 : リストのハナシ1 - livedoor Blog(ブログ)

また、「Training for climbing 3rd edition」では、"筋肉の性質上、その筋肉がなるべく伸びている状態の方が力が発揮でき、指屈筋は手首が背屈した状態が最も伸びているので、チカラが入りやすい」と記載されています。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。

 

 

Climb Injury-Free

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目新しいトレーニングに無闇に飛びつかない(シャイニーオブジェクト症候群)

本ブログを始めて一ヶ月弱経ちました。その間に紹介したトレーニング/リハビリ方法は、古くから提唱されている内容もあれば、比較的目新しい内容も含んでいます。

もし有効と思える内容があれば、一次情報を確認の上、トライしていただくのもよいと考えますが、その際には、自身の現状を振り返って、本当に有効なのか確認した方がよい、というお話です。

シャイニーオブジェクト症候群とは

元はビジネス用語だと思いますが、「新しく魅力的なもの(シャイニーオブジェクト)にすぐ飛びつくこと」を指します。例えばあなたが会社員だとして、上司が雑誌やテレビで見かけた輝かしい成功事例を毎週のように「うちにも導入するぞ!」なんて言うような人だったら、実行する部下の側としては堪ったものではありません。戦略立てて計画的にビジネスを実行しているのであれば、有限の人・物・金のリソースで組み上げた計画に新しい要素を割り込ませる事はリスクを伴います。

当たり前といえば当たり前の話ですが、クライミングでも同じようなこと、よくあるんじゃないでしょうか。有名クライマーのインスタグラムをフォローしていると、常人とは思えないフィジカルパワーを発揮したトレーニング動画が、毎日のように流れてきます。

例えば、上記の小山田さんの動画を見て「やはりクライミングは保持力だ!」と、すぐにでも(4mmとはいかずとも)8mmとか10mmのカチで懸垂しようと考えたとしたら、シャイニーオブジェクト症候群に陥っているかもしれません。

飛びついてしまいがちなトレーニン

上に挙げた例のようにカチでの懸垂を始めることが、間違っていない事もあります。それは、あなたの現時点の弱い環が、「保持力」である場合です。

弱い環になり得る要素(肉体的要因編) - May the friction be with you!

しかし往々にしてありがちなのが、自身の弱い環が保持力や瞬発力などの「肉体的要因」にあると誤認している場合です。キャンパスボード・ムーンボード・フィンガーボードなどのフィジカルトレーニングツールは、有名クライマーのSNSで目を引きやすいですが、足置き・ムーブの正確さなどのスキル要因や、トライ前の集中力・フォールへの恐怖などのメンタル要因が、自身の上達を妨げていることは無いのでしょうか。

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余談ですが、TrainingBetaのFacebookコミュニティページでは、経験数ヶ月のクライマーが「保持力が無いのでトレーニング方法を教えて!」と投稿して、ベテランクライマーが「スキルを先に鍛えろ」と諭すやり取りが毎月のように繰り返されています。

www.facebook.com

シャイニーオブジェクト症候群に陥らないために

アメリカのクライミングコーチEric Hörstは、シャイニーオブジェクト症候群に陥らず、効率的にトレーニングを行なっていくために、以下の2点を行なうことを推奨しています。

  1. 長期的視点でクライミングの目標を立て、目標達成に必要なトレーニングを組み立てる
  2. ベテランのコーチなどに実力を査定(アセスメント)してもらって、有効なトレーニングメニューを提案してもらう

1点目は、何のためにトレーニングするのかという目標を持つことで、必要なトレーニングを絞り込み、有限な時間を有効に使うということです。目標がボルダーなのか、シングルピッチのルートなのか、ビッグウォールなのか、コンペでの好成績なのか、それぞれ毎に鍛えるべき要素は違うでしょうし、その実現時期によっても鍛え方は異なってくる筈ですので。

2点目は、自分ではなかなか気づきにくい真の弱点を、第三者の客観的な視点で見極めてもらいます。なかなかベテランのコーチに師事するのが難しい場合もありそうですが、身近にそのような方がいれば是非アドバイスを求めてみましょう。

一点、ジム等で身近な強いクライマーにもらうアドバイスが、必ずしも有効とは限らないことは注意が必要です。そのクライマーが強く登れるからといって、他人のクライミングの弱点を見抜く能力に優れていたりするとは限りませんし、じっくり弱点を見極めてアドバイスを行なってくれているとも限らないからです。ある程度実績のある人に有料でアセスメントいただいた方が、結果的に近道と考えます。

trainingforclimbing.libsyn.com

また、PowercompanyClimbingでも、「すぐにやめた方がいいトレーニング5選」というPodcastで、新しいトレーニングに飛びつくことを5位に挙げています。このPodcastでは、「現在行なっているトレーニングで成果が出ており、怪我・故障に繋がっていないのであれば、それを継続すること」を強調しています。目新しいトレーニングが有効に見えたからといって、既存のトレーニングが有効じゃないということではないのです。

powercompanyclimbing.podbean.com

またまた余談ですが、このPodcastは大放談で、新しいトレーニングに飛びつかないようにするために「ショーン・マッコールのインスタグラムはfollowするな」とか、「友だち作らず一人でトレーニングしろ」と茶化したりしていて面白いです。

シャイニーではない要素の鍛え方

肉体的要因に目がいきやすい理由として1つ考えられるのが、スキル要因やメンタル要因は、なかなか具体的なトレーニング方法がわかりづらいという点です。管理人も正直詳しくないですが、幾つか入り口になりそうなものだけ紹介しておきます。

スキル要因

  • 部活動

管理人は是非一度受講してみたいと思っていて実現できていないのですが、基本的なフォームや動きについて理論と実践を修得するためのプライベートレッスンです。

  • Neil Gresham Technique And Training

フラッギングやクロスムーブなどの個々のムーブのやり方の説明ではなく、基本的なクライミング時の姿勢や動き方を人間の体の作りと関連付けて説明しています。

www.ukclimbing.com

メンタル要素

山と渓谷社の「登山技術全書フリークライミング」やPUMPの「クライマーズバイブル」でメンタル面の考慮事項と鍛え方が記載されています。

また、管理人は読んでいませんが、UKのレジェンドクライマー、ジェリーモファットが著したMaster Mindは、自身がクライミングコンペ黎明期に好成績を収めるために体系的に学び取り組んだメンタルトレーニングを学ぶことができるようです。

trainingforclimbing.com

まとめ

  • 目新しいトレーニングに飛びつくのではなく、自身の弱い環を見極めて、そのためのトレーニングを行なう
  • 弱い環を見極めるために、ベテランのコーチなど、第三者によるアセスメントが有効
  • 現在行なっているトレーニングが有効であれば、それを継続すべき

管理人も今まで、実力に見合わないキャンパスボードを、ひどいフォームで行なったことにより肩を壊したりしてきました。新しいトレーニングが必ずしもよくないというわけではありせんが、トレーニングは長い目で計画的に、地味なものも目を逸らさずに行なっていくようするのがよさそうです。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。

 

 

疲労回復度合いでトレーニング量を調節する話(オートレギュレーション)

クライマーの性として、日々のトレーニングを行なう際に、楽しいからついつい登り過ぎてしまって、気づいたら指が痛い、肩が痛い、なんていう事があるかと思います。きちんとウォームアップ、クールダウンを行なうのはもちろんですが、やり過ぎ防止の観点では、日々のトレーニングメニューを適切なボリュームで定めて実行していくことも有効と考えます。

しかし、定めたトレーニングメニューを厳密に遂行すればよいのかというと、そうとも言えません。日々の体調や、疲労の回復度合いによっては、定めたトレーニングメニューはオーバートレーニングとなり、更なる疲労の深みにはまって回復できずに故障に至るというシナリオもありえます。

体調や疲労度合いによって、日々のトレーニング量をシステマティックに調節する、オートレギュレーションという考え方を紹介します。

オートレギュレーションとは

オートレギュレーションとは、一般的には人間の体内の自己調節機能を指しますが、トレーニングの世界では、体調や疲労度合いに合わせて日々のメニューを調整する考え方を指し、ウェイトリフティングやボディビルディングのトレーニングにおいて発展してきています。

ここで、「今日はなんとなく調子が悪いからトレーニングのボリュームを減らそう」といったように、曖昧に基準を決めずに行なうのは不十分です。できる限り客観的な指標を定めて、指標に従ってトレーニング量を定めていくということがポイントになります。

客観的といっても、疲労度という計測しづらい対象を扱うため、トレーニングを行なう本人の感覚に頼ります。その感覚を、できるだけぶれないように数値化する工夫が必要になります。

ライミングレーニングへの適用

Eric Hörstの場合

アメリカのクライミングコーチEric Hörstは、自身の著書「Training for climbing」やポッドキャストで、自身や自身の家族(息子のCameronとJonathanは共に5.14クライマー)が実行しているオートレギュレーションを紹介しています。

trainingforclimbing.libsyn.com

Hörstファミリーのオートレギュレーションは、毎回のクライミングやトレーニングセッションにおいて、必ず同じウォーミングアップを行なうように、ルーティーンを厳密に定めておき、そのウォーミングアップの調子で疲労回復度合いを判定するやり方です。疲労回復度合いに従い、トレーニングのボリュームを調節します。

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上記の回復度合いを判定するため、Eric Hörstはトレーニングの前に、必ず以下のウォームアップルーティンを行なうとのことです。

  1. 有酸素運動
  2. 30ポンドダンベルでフィンガーロール30回
  3. 自重懸垂 20回×2セット(通常幅1セット、ワイド幅1セット)
  4. 20mmエッジで7-3リピーター(※)2セット
  5. 加重懸垂(+20ポンド)5回
  6. 加重懸垂(40ポンド)5回
  7. 14mmエッジ+30ポンドで7-3リピーター(※)

(※)7-3リピーター・・・フィンガーボードでのデッドハング7秒ぶら下がり3秒レスト×6回

このウォームアップルーティンの中でも、6と7はEricにとってかなりチャレンジングなワークで、余裕をもってこなせれば回復度合いはステージ4、失敗してしまうようなら回復度合いはステージ1といったように、自身の回復度合いを判定するバロメーターとしているようです。

ちなみに、1ポンドは0.45kgくらいなので、50代半ばにしては、相当ハードなウォームアップです。ウォームアップは個々人に適した強度、ボリュームにカスタマイズが必要と強調しています。

Eva Lópezの場合

Eva Lópezはスペインのクライマー、クライミングコーチで、指の保持力強化方法に関する研究で博士号も有しています。Trangression Boardという、2mm刻みのエッジサイズを備えたフィンガーボードの開発者でもあります。

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Transgression & Progression Training Hang Boards

Eva Lópezのフィンガートレーニングにおいては、明示的にオートレギュレーションという言い方はしていませんが、その考え方のエッセンスが組み込まれています。Eva Lópezのフィンガートレーニングで象徴的なのは、以下の2つのデッドハングの組み合わせです。

  • MED(Minimum Edge Depth) ハング 

自重で、12~15秒で限界になるようなエッジサイズに10秒ぶら下がる

  • MAW (Max Added Weight)ハング

比較的厚いエッジサイズ(20mm程度)に、12~15秒で限界になるような重りを装着して、10秒ぶら下がる

en-eva-lopez.blogspot.com

4週間程度MAWハングを行なった後に、同じく4週間程度MEDハングを行なうなど、刺激の変化を与えることを推奨しています。

MEDハングを行なう場合、トレーニング期間において、標準となるエッジサイズは決めておきます。しかし、体調や疲労度合いに応じて、必ずしも10秒に到達しないと思われる日もあります。そのような日には、エッジサイズを2mm増やすなどして負荷調整することで、怪我を防ぐ事を提案しています。

体調や回復度合いは、Eric Hörstと同様に、ウォームアップルーティンの中で判定します。推奨されているウォームアップは、標準となるエッジサイズに、プーリーシステムなどで自重より負荷を減らしてぶら下がるようにし、徐々に自重に近づけていきます。ウォームアップの仕上げ段階では、自重の90%程度の負荷でぶら下がり、その際の感覚で、今日は標準のエッジサイズでいけそうとか、2mmエッジサイズを増やそうとか判定します。

管理人は、このやり方は試してみたことがあります。感覚によってだいぶ判定にブレが出るんじゃないかと危惧してましたが、「自重90%負荷でギリギリな日は、自重100%負荷は無理」とか、思ったより明確に判断でき、十分実用に耐えるやり方でした。

Tyler Nelsonの場合

Eric Hörst、Eva Lópezのやり方は、疲労度合いの判定に、クライマー自身の感覚という主観的な指標を使用しています。それに対してTyler Nelsonは、より客観的な数値指標を使用する事を推奨しています。

ウォームアップの段階でアイソメトリックテストを行い、その日の出力パワー値を測定する事で体調や疲労度合いを確認します。

まず、特定のエッジサイズにおける最大出力値を、フレッシュな状態の日に確認します。フルクリンプ鍛えるべきか問題(海外編) - May the friction be with you!で紹介したように、体が浮かない程度の重りを体に装着して、計測計が装着されたハングボードを思い切り下に引くことで、最大出力値が何kgかを測定します。

マックスパワーをトレーニングする日には、ウォームアップを終えた後に、その日出せる最大限の力を計測します。その値が自身の最大出力値の85%以下であれば、その日はトレーニングに適さない日と判断して休養するなどします。85%は例に過ぎず、もう少しリスクサイドに立つならば90%などの閾値にする事も可能です。

まとめ

ここまで、クライミングレーニングにおけるオートレギュレーションの考え方を確認してきました。いろいろなやり方がありましたが、共通点は以下の通りです。

・ウォームアップの最終段階で、最大負荷に近いワークを行い、その日の回復度合いを見極める

・回復度合いはできるだけ数値化した指標とし、数値範囲に従ったアクションを定めておく(その日のトレーニングをやめる、ボリュームを1/2にする等)

オーバートレーニングを避ける観点のほか、最大出力を強化を目的とした回復度合いの見極めにも使えると思います。有限の時間と体力資源をできるだけ効率的に活用するため、トレーニングの最適化の一環として、オートレギュレーションの適用を考えてみてはいかがでしょうか。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。

 

 

Training for Climbing: The Definitive Guide to Improving Your Performance (How to Climb)

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  • 作者:Horst, Eric J.
  • 発売日: 2016/07/15
  • メディア: ペーパーバック
 

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フルクリンプ鍛えるべきか問題(海外編)

カチ持ちを個別に鍛えることの是非が、昨年末にTwitterのタイムラインで賑わっていました。

故障予防、グリップ毎の保持力強化必要性、年齢、経験など、様々な観点でメリットデメリットがあり、画一的な評価が難しい問題です。タイムラインでは医療、クライミングの専門家が意見を述べており、管理人のような素人が憶測を述べるのはおこがましい所です。

一方、海外のクライミング系フォーラムで頻繁に議論が湧く話題でもあり、海外での評価を知っておくのは意味があると考えます。そこで、今回は結論を出すのではなく、クライミングレーニングのインフルエンサー達がどのような意見を持っているのか紹介します。

「カチ持ち」だと、フルクリンプとハーフクリンプ両方含みそうですが、今回はフルクリンプを対象とします。

フルクリンプの定義とリスク

定義

まず始めに、フルクリンプの定義を確認しておきます。ホールディングには様々な方言があり、同じ用語でも人によって違うものを指していたりすることがありますので。

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引用元
著:Dr. Jared Vagy(2019年)Climb Injury-Free

ここでは、クライミングの故障予防・リハビリに特化した書籍「Climb Injury Free」 - May the friction be with you!で紹介したClimb Injury-Freeの定義を採用します。関節は、手首に近い側から第一、第二、第三関節とします。

  • オープンハンド

第一〜第三までの関節を最小限曲げる。

  • ハーフクリンプ

第一、第二関節を曲げ、第三関節はまっすぐ。

  • フルクリンプ

第一、第二関節を曲げ、第三関節は手の甲側に反る(第二関節が、保持面より上に出る)

  • クローズドクリンプ

フルクリンプの人差し指に、親指を添える

リスク

第二関節を大きく曲げた状態で荷重がかかることにより、以下のような故障のリスクが高まります。

  • 関節炎

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第二関節の軟部組織が狭くなった状態で負荷がかかり、炎症を起こします。クライマーの第二関節がぷっくり膨れてるやつです。

  • 腱鞘炎

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Finger Tendon Pulley Injuries from Climbing Nicros

指を曲げると、指の腱は骨から離れて浮き上がる方向に力がかかりますが、腱鞘というリング状の靭帯組織が、浮き上がらないように押さえています。この浮き上がりの力が腱鞘に炎症を起こしたり、悪くすると腱鞘が破断して腱が浮き上がってしまったりします(ボウストリンギング)。この破断する音が、いわゆる「パキる」というやつです。

  • 骨端線損傷

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引用元
著:菊地敏之(2019年)クライマーズ・コンディショニング・ブック 山と渓谷社

成長期のクライマーは、指の骨も成長します。骨の先端付近の成長軟骨帯(骨端線)という部分が徐々に骨に置き換わっていく事で成長していきますが、この部分は腱や靭帯よりも損傷しやすく、フルクリンプの負荷によって、近辺の骨折を起こす事があります。

推奨派と否定派の集計

それでは本題です。母数が少ないですが、クライミングレーニングに関わるコーチ、トレーナー、理学療法士などのうち、書籍・ブログ・SNS等で積極的に情報発信をしている人達の意見を集計してみました。(ぶっちゃけ、管理人がよく見るサイトを並べただけなので、抜け漏れあると思います。)

結論としては、何かしら個別にフルクリンプトレを推奨している人が半数近くおり、思ったより多いなという印象です。ただし、ビギナーから行なう事を推奨しているのは1例のみでした。

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推奨派の意見

推奨理由を明示していない人もいましたが、基本的には、トレーニングの成果はグリップタイプ別に得られるので個別に鍛えるべき、という考え方が多かったです。デイブ・マックラウドはオールラウンドクライマーとしての自身の経験を踏まえて、フルクリンプはフルクリンプをたくさんやらないと強くならないと語っています。

レーニングを推奨する経験値

ビギナーがフルクリンプを個別でトレーニングする事を推奨している人は殆どおらず、中級者以上、もしくは上級者以上の経験と実力がある人が補助的にトレーニングすることを推奨しています。

唯一、Powercompany Climbingでは、ビギナーからトレーニングを開始することを推奨しています。

  •  腱や靭帯を痛めやすいホールディングなので、ある程度腱や靭帯が強くなるまでは、フルクリンプは行わない方がいいという考え方は、意味がわからない
  • 痛めやすいからこそ、実際のクライミングやキャンパシングなどのダイナミックでリスクのある動きでフルクリンプをする前に、負荷を軽く調整できて静的な負荷をかける事ができるフィンガーボードなどで、徐々に腱や靭帯などの結合組織を鍛えて厚くしていくべき

www.powercompanyclimbing.com

Powercompany climbingのNateは、この考えに従い、片手でtension blockに2.5pound(1.134kg)の重りをぶら下げて保持するところから徐々に始めて、50pound(22.68kg)まで徐々にあげていっているとの事です。

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The Block – Tension Climbing

レーニング方法

Tyler Nelsonは、PowerCompanyとは別の方法で、リスクの低いフルクリンプトレーニングを提案しています。

  • 計測計などで、事前に、特定のエッジサイズで自身が出力できる最大出力を確認しておく
  • 最大負荷の40%~80%の負荷で、数十秒継続した負荷をかける。(例)最大出力が100kgで体重が60kgの場合、60%の負荷になる
  • 負荷をかける際は、急にぶら下がらず、ゆっくりと負荷をかけていく(足を徐々に地面から離すイメージ)
  • 健康な結合組織(腱・靭帯)であれば、最大負荷の40%〜80%でゆっくりとした印荷であれば、ゆっくり引き伸ばされるが破断することはない
  • レーニング後にしっかり水分と栄養と休養を与える事で、徐々に結合組織が強くなっていく


Is full crimp finger training safe?

若年層への適用について

注意すべき点として、推奨派の中で、年齢についての議論は含まれていませんでした。リスクで述べた通り、成長期にある若年層クライマーにおいては、フルクリンプの多用は骨端線損傷のリスクがあります。推奨派の言うトレーニング方法は主に腱・靭帯に着目していますが、成長期の軟骨組織にそのまま適用できるとは考えづらいところです。

否定派の意見

これは概ね一致していて、以下2点に集約されます。

  • 第二関節を大きく曲げて力を入れるのは、指の腱と靭帯にストレスが大きい
  • ハーフクリンプを鍛えれば、フルクリンプも強くなるので、個別にフルクリンプを鍛えるのはハイリスクローリターン

個人的に一番知りたかったのは2点目で、ハーフクリンプを鍛える事で、どれくらいフルクリンプも強くなるのかという点でしたが、この点を掘り下げた記事は、残念ながら見当たりませんでした。

(おまけ)プロクライマーの考え方

否定派の考え方の掘り下げができなかったので、おまけで、プロクライマーによるホールディングの考え方を紹介します。

書籍「Climb Injury-Free」では、様々なプロクライマーが故障予防に関するコラムを書いてます。その中から、ホールディングについて記載されている内容になります。真逆で、なかなか面白いです。

ショーン・マッコールの場合

  • フルクリンプは余程必要な場合でない限り使わないスタイルで、95%はオープンハンドかハーフクリンプで登る
  • 保持力は、ハーフクリンプよりフルクリンプの方が強いのは事実だが、クライミングを始めた当初からフルクリンプを避けて登ってきたので困っていない

アダム・オンドラの場合

  • クリンプが指にストレスがかかるのは事実だと思うが、今までの経験上、クリンプで怪我したことはない
  • むしろ、特殊な形状のポケットで薬指一本に負荷が集中して怪我したパターンが多い
  • ポケットだってリスキーなので、クリンプだけを避けるのではなく、満遍なく色々な持ち方を使って登るようににした方が、指への負荷を分散できて、怪我しにくくなるのではないか

まとめ

あまり明確な結論はありませんが、まとめます。

  • 海外のトレーナー、コーチ、理学療法士の間でも、フルクリンプを個別に鍛えるべきか否かは意見が別れる
  • 鍛える場合、負荷には最善の注意が必要という点は概ね意見が一致
  • 若年層への適用は根拠、エビデンスが見られず、推奨されない

もしどうしても個別に鍛えたいという場合、闇雲に限界負荷でぶら下がるのではなく、楽に感じるくらいの負荷から徐々にぶら下がるのがよさそうです。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。

 

Training for Climbing: The Definitive Guide to Improving Your Performance (How to Climb)

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  • 作者:Horst, Eric J.
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クライマーズ コンディショニング ブック

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Climb Injury-Free

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フィンガーボードで筋肥大できるか(アイソメトリックの話)

クライミ ングにおいて重要な筋肉は何かという議論には、様々な考え方がありますが、間違いなく最重要の一つとして挙げられるのは、前腕にある、指を曲げるための筋肉(指屈筋)です。指屈筋の筋力は、実際のクライミングでももちろん鍛えられますが、フィンガーボードのような専門のトレーニング器具にぶら下がると、より集中して鍛える事ができます。

f:id:takato77:20200205221400j:imageフィンガーボードの例(beastmaker2000)

前回書いた弱い環になり得る要素(肉体的要因編) - May the friction be with you!の中で、筋力の強化には「筋肥大」と「筋動員の増強」という2つの過程を経る必要があるという話しをしました。指屈筋も、この2つの過程を経て鍛えるのが望ましいと考えられますが、ここで一つ、問題があります。フィンガーボードトレーニングは「筋動員の増強」には寄与するが、「筋肥大」には効果が少ないと言われることがあるのです。

実際のところ、フィンガーボードトレーニングだけでは筋肥大はできず、筋力向上は頭打ちになるのでしょうか。これは管理人の長年の疑問でしたが、近年、クライミングやボディビル・ウェイトリフティング等のトレーニング記事を読み解くと、フィンガーボードでの筋肥大トレーニングは可能なようです。本記事で考察します。

 

 

フィンガーボードが筋肥大に寄与しない話の出所

遡るともっと古いのがあるかもしれませんが、管理人が記憶しているのは、以下の記載です。

(前略) 動きをともなわないアイソメトリックなトレーニングなので、 筋肥大よりも神経系に働きかけて筋動員率を高める効果があり( 中略) フィンガーボードによるアイソメトリクスやキャンパスボードによ るプライオメトリクスは基本的に神経系に働きかけ、 筋動員率を向上させるトレーニングであるため、 動員率が向上してしまうとそれ以上は伸び率が低下してしまう。 そのようなプラトーを脱するには筋線維を肥大させるトレーニング が効果的である。

 

引用元
著:北山真、杉野保、新井祐己 (2005年)
フリークライミング (ヤマケイ・テクニカルブック 登山技術全書) 山と渓谷社

筋線維を肥大させるために、バーベルを指で巻き込むフィンガーロールをやるとよいと記載されています。mickipediaでは、この方法を改良して、タカギローラー(コロコロ)という器具を用いています。

micki-pedia.com

アイソメトリクスとは

上に出てきたアイソメトリクスとはなんでしょうか。アイソメトリクスとは等尺性収縮とも呼ばれますが、ざっくり言うと「動きを伴わずに筋肉が力を出している状態」の事です。

ダンベルなどを持って腕を肘から曲げる動き(アームカール)を例に考えてみます。上腕二等筋が収縮すると、腱を通して前腕の骨が引き上げられ、負荷となっているバーベルが上に動きます。このように筋肉が縮みながら収縮する動きをコンセントリクスといいます。逆にバーベルを下げる際は、上腕二頭筋が伸びながら、それに耐えるために収縮させており、これをエキセントリックと言います。

アイソメトリックは、途中でバーベルを動かさない状態で耐えて筋肉を収縮させている状態です。

f:id:takato77:20200206103638p:image

https://www.trainingbeta.com/preparing-try-hard-part-1-isometric-testing-p-p-coaches/

フィンガーボードへぶら下がる際の指の動きを考えてみると、指をホールドにかけるため指の形を曲げますが、体重がかかってもホールドを保持し続けるため、指屈筋に力を込めて指が開かないように耐えます。力がかかっても指が動かないように力を込める、これがアイソメトリクスです。

これは実際のクライミングでも同様で、登っていくに従い腕も足も動きますが、指はホールドを掴んでいる間は基本的に動かしません。指屈筋の動きがアイソメトリクスというのは、クライミングの大きな動作特徴なのです。

フィンガーボードで筋肥大する方法

前段が長くなりましたが、本論の「フィンガーボードで筋肥大する方法」を考えます。結論から言うと、以下の条件を満たせば筋肥大するようです。

 

20〜40秒で限界になるようなサイズのエッジを選び、限界までぶら下がる

 


Density hang - open hand

このやり方は、いくつかの筋肥大を促進する要因をきちんと満たしています。

  • 筋肉内の血流が酸欠状態になり、乳酸が蓄積することで、筋肥大を誘引するホルモン(IGF-1)が放出される

筋肉内の毛細血管は、運動に伴って筋肉が収縮すると、圧迫されて細くなります。大体、最大筋力の50%以上の力を出すと、その筋肉内の毛細血管の血流はほぼなくなるようですが、この状態で20秒~40秒運動を続けると、筋肉が酸欠状態になり、乳酸が蓄積していきます。この状態はIGF-1というホルモンが放出されやすい状態で、IGF-1が筋肥大を誘引します。

フィンガーボードに20秒~40秒ぶら下がることで、血管が圧迫された状態で運動し続ける事になります。フィンガーロールのような運動では、コンセントリックとエキセントリックの切替タイミングで血流が流れるようで、酸欠状態を生み出すという意味では、寧ろフィンガーボードぶら下がりの方が理想的なようです。

  • 筋線維をできるだけ多く疲労させる

筋肉は筋線維の集まりですが、筋線維は幾つか集まって運動単位(モーターユニット)を作っています。この運動単位は大きいものから小さいものまでサイズが様々ですが、なるべく多くの運動単位を満遍なく疲労させることが筋肥大の効果を最大化させます。

20秒から40秒ぶら下がれるエッジサイズだと、最初は楽に感じると思います。この間は小さな運動単位が動員されてますが、徐々に辛くなってくるに従い、大きな運動単位も動員されていきます。限界までぶら下がることで、小さな運動単位から大きな運動単位まで、満遍なく疲労させることができます。

  • 筋肉がストレッチされた状態で負荷がかかる

「筋肉がストレッチされた状態で負荷がかかる」状況は、mTorという筋肥大を促進するタンパク質が活性化されることがわかっています。フィンガーボードのエッジにぶら下がった状能は、この状況にあてはまります(前腕の指屈筋に力を入れつつ、重力によりストレッチされる方向に力がかかっている)。

筋肥大に寄与しないと言われていた理由

上記の通り、フィンガーボードにぶら下がることでもしっかり筋肥大を促進できます。一方、今までの多くのアイソメトリクスの研究では、確かに筋肥大に余り寄与しないという結果が多かったようです。その理由は、負荷のかけ方が筋肥大に適したものではなかったからではないかと推察されています。

・負荷をかけた時間が短時間(6-12秒)のため、酸欠・乳酸蓄積に至らず、IGF-1の放出が促進されなかった

・筋肉がストレッチされていない状態で負荷をかけたため、mTorが活性化されなかった

後者は、動かない対象物を押したり引いたりするアイソメトリクス(overcoming isometrics)での実験が多かったから、のようです。

レーニングへ適用する際の考慮点

角度依存性

アイソメトリクスの特徴として、角度依存性があるということがあります。これは、動きがない状態で力を入れるという特性上、その状態から前後15度以上の角度差に対しては効果が少ないということです。

フィンガーボードで言えば、オープンハンドとハーフクリンプなどでは、指を曲げている角度が違いますので、それぞれトレーニングする必要があるということにご留意ください。

実際のボルダリング/クライミングに当てはめた考察

ここまで、フィンガーボードに特化して考察しましたが、実際のクライミング/ボルダリングに当てはめるとどうでしょうか。

ライミング/ボルダリングでの動きは、大体、数秒ごとに手を出し続けますので、この20秒から40秒ぶら下がり続けるという指の動きは、なかなか出てきません。つまり、クライミング/ボルダリングを行なうだけでは、筋肥大を効率的に促進するのは難しいと考えられます。

自身の弱い環が「筋力の伸び悩み」にあると感じる方は、トレーニングに「20秒~40秒フィンガーボードにぶら下がる」プログラムを組み入れることを考えてみるのもよいのではないでしょうか。

まとめ

  1. フィンガーボードを使用した筋肥大トレーニングは可能
  2. その際のワークは20秒~40秒で限界になるエッジサイズを見極め、そのエッジサイズで限界までぶら下がることがポイント
  3. オープンハンド、ハーフクリンプなど、鍛えたいホールディング毎に実施する必要がある
  4. ライミング/ボルダリングは、筋肥大という観点では、最適な運動ではない

といったところです。

アイソメトリクスに関する知見は、カナダのウェイトリフター・ボディビルダー・トレーニングコーチ、クリスチャン・ティボドーがアイソメトリクスについて記した記事を参考にしました。

thibarmy.com

また、筋肥大を促進するフィンガーボードでのトレーニングプログラムは、以前も紹介したDr. TylerNelsonの記事でも取り上げられてますので参考に。

www.trainingbeta.com

記事内の「Density Hang」が、今回紹介した筋肥大を促進するプログラムとなります。

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。

 

 

Beastmaker 2000

Beastmaker 2000

  • メディア: その他
 

 



 

弱い環になり得る要素(肉体的要因編)

ライミングには様々な能力が求められます。細かいホールドを瞬間的に掴むためのパワー、効率的に動くためのテクニック、落ちたら怪我をするような場面でも冷静に集中して動くためのメンタルなど。

そのどれか一つでも、極端に弱いものがあれば、クライミングの総合的な実力は、その能力に引きづられて低下しまいます。これを弱い環の原則といいます。そのため、効率的にクライミングの実力を向上していくには、その時々の弱い環である能力を引き上げていくトレーニングを行うことが重要になるわけです。

それでは、弱い環になり得る要素、逆に言うとトレーニングにより鍛えるべき要素にはどんなものがあるのでしょうか。

ライミングレーニングの古典的名著「パフォーマンスロッククライミング」では、クライミングのパフォーマンスに影響する要素を6つに分けて、包括的にまとめています。

f:id:takato77:20200202193713j:image

引用元

著:ウド・ノイマン、デイル・ゴダード 訳:森尾直康(1999年)パフォーマンスロック・クライミング 山と渓谷社

外的要因や基礎的条件など、トレーニングで鍛えづらい要素も含みますが、「肉体的要因」や「コーディネーションとテクニック」は、ジムでのクライミングやフィジカルトレーニングで効率的に鍛えられそうですし、「心理的側面」についても、思考法や呼吸法などのアプローチによるトレーニングが可能です。

これらのトレーニングによる改善が可能な要素にはどのようなものがあるのか、そして必要となるトレーニングは何なのかを知っておくことは、効率的にクライミングの実力を向上させるトレーニング計画を組み立てるために有効と考えられます。

例えば、先日mickipediaにアップされた下の記事では、「最大筋力を上げるための適切なトレーニング」がテーマですが、弱い環を最大筋力と捉え、そこを集中して鍛えるための方法論・心構えを考えているのです。

micki-pedia.com

本記事では「肉体的要因」を対象に、全体像が見えるように概略をまとめてみます。

f:id:takato77:20200204091343j:image

筋力を強くする

最初はやはり筋力です。例えば前腕にある指屈筋という筋肉を鍛えることにより、ホールドを保持する際に、指を曲げた形で保つ力を強くすることができます。トレーニングによって筋力が強くなる過程には以下の二段階があります。

筋肥大する

レーニングによる刺激により、筋肉が大きくなるものです。

筋肉は筋繊維という細い組織がたくさん集まってできています。それらの繊維がトレーニングによって千切れて修復する過程で、より太くなっていきます。できるだけたくさんの筋繊維に負荷をかける為に、筋肥大のための筋トレは「疲労困憊まで追い込む」事が効率的である事が、近年わかってきているようです。これは必ずしも高負荷である必要はなく、低負荷のワークを高回数行うことでも実現できます。

神経出力が適応して筋力が増強する

ライミングにおいては、筋肥大はトレーニングの一過程に過ぎず、目的ではありません。飽くまで目的は、筋肉が発揮できる力=筋力を大きくする事にあります。筋肥大だけでも筋力は増えるのですが、それ以上に重要となるのは、力を出そうとした時に、同時に動員できる筋繊維の数を多くする事です。

ある筋肉を動かそうとしたときに、脳から神経を通して、その筋肉を構成する筋繊維が収縮するように指令が飛びますが、その時に一部の筋繊維は動員されず遊んでます。トレーニングにより、神経出力が向上し、同時によりたくさんの筋繊維を動員できるようになることで、筋力を向上させる事ができるのです。

筋肥大のためのトレーニングと異なり、神経出力の向上のためには、高強度のトレーニングを少ない回数で行うことが必要となります。

筋肥大と筋力の増強については、理学療法士・トレーナーである庵野拓将さんの以下ブログ記事がわかりやすいです。

www.rehabilimemo.com

また、庵野さんが書いた以下書籍も、上記を含む最新の筋トレ理論がまとまっておりお勧めです。

科学的に正しい筋トレ 最強の教科書

科学的に正しい筋トレ 最強の教科書

  • 作者:庵野 拓将
  • 発売日: 2019/03/28
  • メディア: 単行本
 

腱・靭帯組織(結合組織)を強くする

ざっくり言うと、腱は筋肉と骨を結合する組織で、靭帯は骨と骨を結合する組織です。よく、アキレス腱が切れると手術するしかないとか聞くと思いますが、そのイメージからか、腱・靭帯のような結合組織は成長も回復もしない静的な組織と思われている方も多いんじゃないでしょうか。

しかし実際には、非常にゆっくりですが、結合組織も成長する事がわかっています。また逆に、完全に断裂していなくても、日々のクライミング負荷により、細かいダメージも負うので、回復の期間も必要です。

運動における結合組織の役割は、筋肉の収縮で発生した動きを骨格の動きへ変換して伝える事です。先に上げたホールドを保持する際の指の動きで言うと、指屈筋が収縮することで発生した力は指屈筋腱などの結合組織を経由して指先の骨を曲げた形で固定することで、指先に力を伝えます。結合組織が細かったり柔らかかったりすると、力のロスが大きくなってしまいます。てこの原理を考えた時に、支柱の棒がぐにゃぐにゃだったら、力が伝えられないと言うことです。そのため、筋力だけではなく、結合組織も鍛える必要があるのです。

結合組織が肥大する

結合組織を太く厚くするには、結合組織を伸び縮みさせる負荷をかける必要があります。数十秒、結合組織にアイソメトリックな負荷をかけ続けると、結合組織が引き延ばされて隙間ができます。しっかり休養して隙間が修復して埋まっていくことで、結合組織は厚くなっていきます。

厚くなることで、筋肉、結合組織、骨が一体となった構造が、全体として強靭になり、より大きな力を生み出す事ができます。また、結合組織が切れにくくなり、ハードなクライミングに対し、より怪我しにくくなります。

注意が必要な点としては、結合組織の成長のスピードは、筋肉と比べてかなり遅いという事です。クライミングのトレーニングを続けていると、筋力は早く増強されても、結合組織の成長が追いつかず、全体としての力の発揮が上げ止まったり、最悪の場合は結合組織が切れてしまうなんて事も起こり得るので注意が必要です。

結合組織が固くなる

結合組織の固さも、トレーニングにより最適化が可能な要素です。運動における結合組織の役割を思い返してみると、より固い方が、筋肉で発生した力を効率的に作用点へ伝達できます。また、力の伝わるスピードも、結合組織が固い方が速いと言われており、デッドポイントやランジでホールドを掴む時のように、瞬間的に力を込めるシーンでは、結合組織が固い方が都合がよいことになります。

結合組織を固くするためのトレーニングは、上記のような、瞬間的に力を込める動きをするとよいようです。最大筋力の40%-80%の力で、瞬間的にホールドにぶら下がることを繰り返すと、徐々に結合組織が固くなっていくと言われています。ボルダー壁でデッドポイントを行ったり、キャンパシングを行なうことが、それに当たるでしょう。

ここまで書いてきた、筋肉と結合組織を計画的に鍛える方法として、アメリカのクライミングレーニング総合サイトtrainingbeta にて、ハングボードを用いたトレーニングスキームが提案されています。

www.trainingbeta.com

ぶら下がりの強度、長さ、反復数を調整し、筋動員の向上→結合組織の肥大→結合組織の固さの順で鍛えていきます。このスキームは興味深いので、機会を改めて紹介したいと思います。

エネルギーシステムを強くする

筋肉・腱・靭帯と、物理的な組織の適応を見てきましたが、視点を変えて、筋肉を収縮させるエネルギーであるATP生産機構(エネルギーシステム)も、トレーニングで向上させる事ができます。

f:id:takato77:20200202155847j:image

例えばボルダー課題は、手数にもよりますが、完登まで数十秒程度かかるものが多いと思います。これは乳酸性機構でエネルギー生産が継続できる限界に近いですが、ボルダー課題の最上部で核心の厳しい一手が出てきたりすると、エネルギーが枯渇(電池切れ)して手が出せない、なんて事が起きるわけです。

ここで乳酸性機構がもう数秒働いてくれれば、最後の一手が出せます。例えば、乳酸性機構においては、化学的にグルコースなどの糖類からATPを生み出しますが、適切なトレーニングにより、その過程で働く酵素の働きを活性化させるなど効果を得る事ができ、結果としてより長く無酸素状態でのエネルギー生産を続けられるようになります。

ややこしいのですが、乳酸性機構は持久系トレーニングで効率化されるので、4×4(限界グレードよりちょっと低いグレードの課題を短いレスト時間で4課題×4セット登る)などのトレーニングを行います。ボルダリングで成長の頭打ちを感じていても、自身の最も弱い環が持久力であれば、そのトレーニングをする必要があるわけです。

まとめ

全体像を明らかにしたいと思いましたが、エネルギーシステムのところは歯抜けになってしまいました。他にも漏れてる要素があると思うので、気づいたら是非ご指摘ください。

f:id:takato77:20200204084324j:image(再掲)

肉体的要因には筋肉の他にも腱・靭帯などの結合組織やエネルギーシステムがあり、それぞれの鍛え方も異なります。クライミングを行うことは、全ての要素を鍛えるための刺激になりえますが、どれか一つの要素を鍛えようとした時には、刺激が不十分となる事もあります。弱い環を明確にして、クライミングの他にも弱い環に特化したトレーニングを行うことも考えてみてはいかがでしょうか。

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。

クライミングの故障予防・リハビリに特化した書籍「Climb Injury Free」

ライミングを継続して行なっていると、どうしても肩、肘、指など、メンテナンス不足・オーバーユースで故障してしまうことがあります。故障したら、まず整形外科を受診して原因を特定の上、適切なリハビリテーションを行なうのが基本となりますが、自宅でセルフで実施したいと考える方も多いのではないでしょうか。

ライミングで発生しやすい故障の予防、リハビリテーションをわかりやすく解説した書籍「Climb Injury-Free」を先日読み終えましたので、内容を紹介します。

Climb Injury-Free

Climb Injury-Free

  • メディア: ペーパーバック
 

英語で記述されていますが、図解が豊富で、わかりやすい英語で書かれているため、英語が苦手な方でも読みやすいと思います。Kindle版があると辞書が引きやすいのですが、残念ながら未対応です。

著者のJared Vagyは14年間のクライミング経験と豊富な理学療法士としての経験を元に、本書を書き上げました。

本書の内容

クライマーの体のケアを扱った本というと、菊地敏之さんのクライマーズコンディショニングブックがあります。

クライマーズ コンディショニング ブック

クライマーズ コンディショニング ブック

 

クライマーズコンディショニングブックは、体の各部位の骨格、筋肉、腱組織の構造を詳細に解説し、クライマーに起こりやすい障害の症例が示されていました。Climb Injury-Freeの場合、構造の解説は省略しており、実践的なケア・トレーニングのワークの解説が中心となっています。

故障予防

リハビリテーション方法

  • クライマーの典型的な障害(10項目)に対し、回復段階毎のワークを解説

対象部位

上肢(指、手首、肘、肩)と首が対象で、下半身は本書の対象外です。具体的には、首の痛み(ビレイヤーズネック)、肩のインピンジメント、テニス肘、ゴルフ肘、腱鞘炎(いわゆる「パキり」)などを扱っています。

本書の特徴

ライミングの動作特性に沿ったワークに特化

例えばウォームアップでは、クライミングで頻繁に行なう動作を模したダイナミックストレッチを行なうことを推奨しています。

上のInstagram動画は著者のアカウントで、モデルのクライマーはジョナサン・シーグリストです。動画最初の動作の例でいくと、カウンターバランスの動きを模しています。このようなダイナミックストレッチを幾つか行なって、実際に壁に取り付く前に様々な腱/筋組織を刺激し、クライミングで必要となる可動域を徐々に広げていきます。ポイントは「クライミングで必要となる可動域」というところで、クライミング動作をパターン化してなるべく網羅できるように考慮されています。

本で紹介されているメニューを実際にやってみるとわかりますが、全てやっても5分程度です。ちょっと見た目恥ずかしいですが、習慣化すれば故障予防に役立ちそうですので、試してみてはいかがでしょうか。

リハビリ方法を体系的にまとめている

本書はリハビリの段階をRock Rehab Pyramidという体系にまとめていて、各部位毎のリハビリ方法は、この体系に沿って組み立てられています。

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出典 Climb Injury Free: Shoulder Impingement - Part 5 - Correct Your Movement

ピラミッドの下からリハビリを進め、各工程を痛みなく行えるようになったら次の工程へ進みます。

  • フェーズ1

痛み、炎症があり、損傷組織へかかる負荷を軽減するフェーズ。安静に努めたり、テーピング等を行なって損傷組織へかかる負荷を軽減し、痛み・炎症を鎮めます。

  • フェーズ2

可動域を取り戻すフェーズ。ストレッチ等で、故障により減少した可動域を回復させるフェーズ。

  • フェーズ3

負荷をかけて、低下した筋力を回復させるフェーズ

  • フェーズ4

実際のクライミングを行なう際に、故障につながりやすい動きの癖を改めるフェーズ。

 

フェーズ4が特徴的なところです。オーバーユースに伴って発生する故障は、そもそもクライミングの動きに悪い癖があることが多く、これを改めることで持続的に故障の少ないクライミング生活を行なえるようになりますよ、という提案がされています。

例えば、上のInstagram動画は、肩のインナーマッスルである腱板を損傷しやすいムーブの癖を例示し、その直し方を提案しています。

(×)肩をすくめるようにして、腕を中心にホールドにぶら下がる姿勢→腱板に負担がかかりやすい

(O)肩甲骨周りの筋肉を動員し、肩甲骨をしっかり下げる

オンラインで参照可能な動画教材あり(別売)

書籍だけでも図解と詳細な動きの解説があるので、充分実際のワークを行えますが、別売で、本書で紹介されている全てのワークメニューの動画が購入可能です。

上のサンプル動画はyoutubeですが、購入版は動画サービスのVimeoで提供されています。スマホタブレット・PCどれでも、オンラインで視聴できます。書籍はAmazonでも買えますが、動画は著者のWebサイト(以下)でしか買えません。

theclimbingdoctor.com

また、書籍と一緒に買うことで動画は半額になりますので、合わせて著者のWebサイトで買うのがよいと思います。

Dirtbag Tips

本書で紹介されているリハビリテーションや故障予防のメニューには、ツールが必要となるものがあります。ストレッチポールのようなフォームローラーや、指を伸ばす力を鍛えるグリップセイバープラスなどですが、当然ですが、これらのツールの購入にはお金がかかります。

著者は一時期フルタイムでクライミングに集中していた時期があるとのことで、お金のないクライマーの気持ちはよくわかると言っており、身の回りにあるものを代替として行なうやり方も紹介してくれています(Dirtbag Tips)。

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出典 Climb Injury-Free – The Climbing Doctor

例えば、フォームローラー→ロープを束ねたものやバスタオルでの代用を提案してます。グリップセイバープラスは太い輪ゴムでの代用を提案してますご、「太い輪ゴムは、スーパーに行くと、アスパラガスやブロッコリに巻いてあるよ!」と、入手方法まで教えてくれます

注意点(医療機関を受診する必要性)

本書で繰り返し述べられていることは、セルフで実施可能なリハビリ方法を提示しているものの、故障したらまず整形外科を受診して確定診断を取り、指示に従うのが基本ということです。

それであれば、全て医師の指示に従えばよさそうですが、本書を読んでリハビリ方法やよくある怪我の原因を理解するメリットはなんでしょうか。

それは、外科を受診する際に、症状に関連すると思われるクライミング動作の特徴を説明したり本書を参考にリハビリ内容の相談をすることで、より適切な診療方針をともに組み立てられる事だと思います。全ての整形外科医がクライミングの動作に詳しいわけではないので、著者は、整形外科を受診する際に本書を持参して、参考として見せられるようにしておく事を推奨しています。

まとめ

クライマーの体のケアについて、実践的なワーク方法をわかりやすくまとめた書籍「Climb Injury-Free」を紹介しました。

管理人はここ1年くらい、指、肩、肘の故障に悩まされていて、スポーツ整形を受診しつつ、ネット上で様々なケア情報を読んできましたが、本書はとても体系的で、かつ実用性に溢れています。

著者の考え方のエッセンスだけでしたら、書籍を買わなくても、podcastインタビューで概ね語られていますので、まずはこちらを聞いてみてはいかがでしょうか。

www.trainingbeta.com

音声で聞いてもいいですし、一言一句の書き起こしも書いてあるので、ヒアリングが苦手な方でも辞書引きながら読めると思います。

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。