ワイドボーイズによるジャミング強度の実験

ワイドボーイズとして活動しているクラッククライマーのトム・ランドールとピート・ウィタカーが、面白い実験をしていたので紹介します。色々なジャミングについて、何kgの加重に耐えられるかを測定するものです。

クラッククライミングをやった事がない人にも、ジャミングがどれくらいの強度を持ったホールディングなのか、数字でイメージできると思います。(クラッククライミングをやる人には、当たり前の結果かもしれません。)

実験内容

実験は、クラックを模したホールド(板2枚を組み合わせて幅を調整可能にしたもの)に、デジタル計測できるバネばかりを付けて、思い切り引っ張るという単純なものです。動画を見てもらえれば一目瞭然です。


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実験対象のクラックのサイズは、指先がかかるくらいの細いフィンガー、普通のフィンガー、リングロック、シンハンド、ハンド、フィストの6種類となってます。シンハンド、ハンド、フィストについては、何も装着していない場合と、ワイドボーイズブランドで新発売されたクラックグローブを装着した場合の2パターンで検証しています。

実験結果

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実験結果は上の表のようになってました。全て、片手で行った際の数値です。こうして数値化されると、いろいろ感覚的に理解していたつもりの事も明確にわかり興味深いです。いくつか気になった点をピックアップして以下に記します。

ハンドジャムの圧倒的な強力さ

あらゆるジャミングの中で最も強力なハンドジャムは、やはり圧倒的な強度が出ていました。ジャミンググローブをしていない状態でも、トムもピートも70㎏以上の数値が出ており、片手で余裕で足ブラになれることになります。

このような感覚は、クラッククライミングをよくやるクライマーにとっては、比較的なじみ深いです。しかし、クラッククライミングをやらないクライマーの中には、コンペなどでハンドジャムの課題が出てきたのを見ても、どのくらい効くのかイメージが湧かない人もいるんじゃないでしょうか。

マイリンゲンのWCで、ハンドジャムを決めて観客を煽っていたアダムの気持ちが少し理解できるかも?


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シンハンド、フィストの強度がかなり高い

シンハンドは、個人的にはかなり決めにくいジャムという印象でした。しかし、この実験結果だと、40㎏以上の強度が出ています。足がきちんと踏めていれば、多少傾斜があっても、スタティックに手を出していくことも可能そうです。

また、フィストについては、ジャミンググローブを装着した場合、70㎏以上の強度が出ており、片手で足ブラが可能な数値です。下がすぼまったクラックに決めるボトミングで決めるフィストならば、それくらいの数値は出そうです。しかし、パラレルなクラックに決めるフィストでここまでの強度が出るのは意外でした。

グローブによるジャミング強度の変化

シンハンド、ハンド、フィスト全てにおいて、ジャミンググローブを装着した方が、10~30kgくらい強度がアップしていました。クラックグローブは、手の甲の保護といった目的以外にも、明確にジャミングの強度がアップする効果がある事がよくわかります。

リングロックの強度はやっぱり低い

ワイドボーイズの2人によるリングロックの強度の平均は18.5㎏でした。両手ともにリングロックを決めても、18.5×2=37kg程度で、足ブラにはとてもなれません。ワイドボーイズの2人をもってしても、強度の出しにくいジャミングであることがわかります。

実は以前に似たようなやり方でリングロックの強度を測ったことがあり、その際の結果は17.5㎏で、ほぼ同じ数値でした。プロと素人で差が少ないということは、あまり筋力とかは関係なく、テクニックが習熟すれば構造上同じような強度に落ち着くジャミングなのかもしれません。

 

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また、トム・ランドールは手が薄いようで、リングロックと同じ幅のクラックに、シンハンドを決めた場合の実験も行なっていました。シンハンドの方が、リングロックの倍以上の強度が出ています。個々人の手の構造によりますが、シンハンドが決まるなら、リングロックよりシンバンドを決めた方が強度が出るようです。