左手中指関節炎リハビリの記録(動注治療による痛み改善)

以前の記事で少し触れたとおり、左手中指の関節炎のリハビリが一段落しました。同じような症状に悩まされている方の参考になるかもしれないので、経過や対処した内容などをまとめておきます。

最初に言っておくと、クライミングするには支障ない程度まで回復したものの、世間一般的な基準から言うと、おそらく完治とは言い難いです。また、ほぼ個人的な感想に過ぎないので、実際に関節炎に悩んでいる方は、内容を鵜吞みにせずに、まず医療機関を受診することをお勧めします。

リハビリの経過(タイムライン)

およそ2年に渡った左指中指のリハビリは、大きく二期にわかれています。最初の一年は端的に言うと失敗で、痛みは殆ど引きませんでした。次の一年で、ようやく快方に向かった感じです。

 

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リハビリ第一期のまとめ

リハビリ第一期のポイントは大きく言うと以下の2点です。

  1. 左手中指のトラブルは、腱鞘炎と関節炎の2つあった事を認識
  2. 腱鞘炎は1ヶ月で治癒したが、関節炎は慢性痛になっており、一向に治らなかった

リハビリを開始したきっかけは、2019年9月にジムでクライミングしていた時です。カチ課題を登っていた時に、左手中指の腹側に痛みが出てきました。

近所の整形外科で診てもらったところ、ジムで痛めたのは「左手中指第二腱鞘の炎症」という診断でした。しかし、それだけではなく、「変形性指関節症」もひどいね、と言われました。これが2年間リハビリに費やした関節炎です。

 

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1ヶ月ほどクライミングを休んで、徐々に強度を上げながら再開しました。腱鞘炎は問題なく治っていたようで、指の腹側の痛みはなくなりました。しかし関節の痛みはと言うと、休む前と殆ど変わっていませんでした。

別のスポーツ整形外科を2件ほど受診してみましてが、同じように変形性指関節症と診断されました。クライミングを長く続けてきて繰り返し負荷がかかったことにより、骨が変形し軟骨もすり減っている状態です。軟骨は本来、指を深く曲げて負荷をかけた時に、ショックアブソーバーとなって負荷を軽減してくれます。それがすり減っているため、関節内の組織(関節胞)にクライミング中の負荷がダイレクトにかかって、慢性的に炎症を起こしているとの事でした。

第二期のまとめ

痛みのレベル

結局半年以上経っても、左手中指第二関節の腫れと痛みは改善しませんでした。この時の痛みのレベルはこんな感じです。

  • 安静時は痛くない
  • 固い平らなもの(テーブルなど)を、腫れてる関節でコツンと叩くと激痛が走り、30秒くらい痛みが残る
  • フルクリンプは痛すぎて全く握る気が起きない

正直、このままではトレーニングもままならないので、もう一度リハビリをやり直す事にしました。

ペインクリニックの受診

第二期にやった事で一番効果的だったのは、ペインクリニックの受診です。前々から気になっていた、関節炎の痛み改善治療を、表参道のオクノクリニックで受けてきました。

治療内容(動注治療)

オクノクリニックで提供している治療は、動注治療というもので、前腕の動脈への注射です。

どのように痛みを減らす効果が得られるのかについては、診察時に受けた説明やクリニックのHPから、理解した内容を以下に記載します。正確なところは、リンク先を確認して判断ください。

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ブシャール結節などの慢性的な痛みの原因は、「モヤモヤ血管」と呼ばれる異常な血管です。動注治療は、そのモヤモヤ血管を減らす効果があります。

繰り返し運動などの負荷をかけた部位は、回復するために充分な栄養と休養が必要です。その回復が不十分だと、中途半端に再生した異常な血管(モヤモヤ血管)が増えていきます。モヤモヤ血管の周辺には、神経も一緒に増えていき、痛みの原因になっている、という事のようです。

動注治療は、動脈から微細な粒子状の薬剤を注射します。それにより、モヤモヤ血管への血の流れが阻害されて、モヤモヤ血管を減らす事ができます。

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詳しくはリンク先を見てもらえればと思います。なお、保険外診療なので、それなりに高いです(クライミングシューズ2〜3足くらい。。)。

動注治療後の回復経過

痛みをなくすという意味では、劇的に効果がありました。感覚的には、注射から数日で、痛みは1/10くらいになり、日常生活では殆ど気にならないようになりました。

一方、クライミングのホールドを持つ動作をすると、前ほどではなかったものの、少し痛みがありました。やっぱり治ってないのかな、と暗い気持ちになりましたが、様子を見ながら少しずつ指にかける強度を上げていきました。

動注治療を行う前と大きく違ったのは、強度を上げていっても、痛みがひどくならなかったことです。例えば、10kgの負荷を指にかけて痛みがあっても、日を改めた次回もしくは次次回に同じ負荷をかけると、痛みを感じず、徐々に負荷を上げていくことができました。動注治療を行う前だと、同じように強度を上げていっても、一定の強度を超えると結局ひどく痛むようになってしまっていたので、大きな違いです。

オープンハンド、ハーフクリンプは、半年程度で全力出して登れるようになりました。その後フルクリンプのリハビリを始めて更に半年、トータルで結局一年かかりました。

動注治療の適用範囲

動注治療の目的は、痛みをなくす事のみです。既に進行しまっている、骨や靭帯の変形や損傷については、動注治療で治す事はできないです。

例えば、今回も指の可動域は戻りませんでした。今も十分に曲げ伸ばしはできません。また、激しく登った日には少し痛みが出ます。骨棘ができているのと軟骨がすり減っているので、強く負荷をかけると、多少腫れるのは避けられないということでした。

理想としては、関節炎の症状が出たら、慢性痛になる前に完治させてしまうのがよいです。それで治るなら、そもそもこのような治療を受ける必要がないわけですから。痛みがある時は無理せずに、しっかりと休養と栄養を摂りましょう。

しかし、既に長らく関節炎に苦しんでいて、慢性痛となっているクライマーには、動注治療は良い選択肢になる可能性があります。痛みを和らげる効果は劇的にありました。

リハビリの到達点

リハビリの到達点としては以下のようなものでした。

  • ライミング中に全力で握り込んでも、痛みを気にせず登れる程度まで回復
  • しかし、強度の高いクライミングをした日には少し腫れて痛みが出る。翌日には概ね回復。
  • 可動域は殆ど戻らなかった

できれば、指が十分に曲げ伸ばしできて痛みが完全に無くなるのが理想でしたが、そこまでは到達できませんでした。20年余のクライミング歴を通して、ろくにケアをしてこなかったツケなので、致し方ないと思っています。関節痛を抱えるクライマーの方は、どうかこの事例を反面教師としていただき、早めのケアを行うようお勧めします。