クライミングで指にかかる負荷をデジタルクレーンスケールで可視化してみる

先日、デジタルクレーンスケールを買いました。デジタルクレーンスケールというのは、要するにバネ計りの事で、重さを計測したいものをぶら下げると数値を出してくれるものです。

購入したものは、言い方は悪いですが安物で、Amazonで検索して一番安そうなのを買いました。

 

 

なんのためにこんなモノを買ったのかと言うと、保持力を数値化して見るのに便利だからです。しばらく使ってみて感じた使い勝手を共有します。 

 

 

標準的な指の保持力数値化の方法

指の保持力を数値化する方法については、プーリーシステムを使用した方法を以前に紹介しました。

takato77.hatenablog.com

 

この方法では、負荷を上げたい時にはウエストベルトに重りをぶら下げ、逆に負荷を下げたい時にはプーリー(滑車)を介して体重の一部を支えます。

この方法において、一つデメリットを上げるとすると、保持力の最大値を測る際に負荷量の調整がめんどくさいということです。Latticeの標準的な測定方法による定義では、7秒ギリギリぶら下がれる負荷量を保持力の最大値としています。その負荷量を見定めるため、負荷量を上げたり下げたり調節して、何度かぶら下がることになります。毎回重りを足したり減らしたり、けっこう大変です。

デジタルクレーンスケールによる保持力の測定

デジタルクレーンスケールを使えば、上に挙げたようなわずらわしさを感じずに簡単に保持力の最大値を数値化できます。これは、「Recruitment Pulls」という保持力トレーニングの応用です。

「Recruitment Pulls」はThe Simplest Finger Training Programというメソッドの一部で、やり方は至ってシンプルです。固定されたハングボードから、片手でぶら下がれないサイズのエッジを選び、そのエッジを同じく片手で全力で保持してゆっくり数秒引っ張ります。ぶら下がれないサイズなので、当然体は浮きません。しかし全力で引いているので、それが選んだエッジサイズに対する最大保持力になります。

リンクの記事中では全力で引くこと自体がトレーニングの目的なので、数値化は考えておらず、デジタルクレーンスケールを使用していません。が、The Blocki-VOUなどのぶら下げ型ハングボードとデジタルクレーンスケールを組み合わせることで、簡単に最大保持力を数値化できます。

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例えば管理人がi-VOUの18mmエッジでRecruitment Pullsをやると、体調によって上下しますが、右手ハーフクリンプで30.5kgが今のところの最大値です。体重が66㎏くらいなので、18㎜のフラットエッジに両手でぶら下がるためには、あと数kg保持力を上げる必要がある、ということですね。

Recruitment Pulls方式は、プーリー方式に比べてもう一つメリットがあります。それはプーリーを介さないので、数値が正確ということです。

プーリーというのは、つまり滑車で、滑車というのは力の向きを変える仕組みです。ロープを通した滑車の軸が滑らかに動くことで、理想的には、力の大きさは変えずに、力の向きが変わります。しかし、現実には軸の摩擦はゼロではないので、その分、力の大きさは変わってしまいます。

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写真は、オシラント(ぺツル社)というプーリーで、ロープの片側には7.5㎏、もう片側には11.25kgの重りをぶら下げてます。わかりづらいかもしれませんが、両者は吊り合っていて動きません。理想的な滑車であれば11.25kgの方が重いので、するする下へ動くはずですが、そうはならないです。オシラントのカタログ値は効率71%となっていて、写真の数値はカタログ値より少し悪いですね。

話を戻すと、プーリー方式では、プーリーを介して下げた負荷量が重りの重さとしっかり一致しないということです。カタログ値通りとしても、ぶら下げた重りの分は3割程誤差を見込んだ方がよい数字になります。デジタルクレーンスケールはこの誤差を考慮しなくてよいメリットがあります。

実際に使ってみた感想

実際に1ヶ月ほど、保持力トレーニングにクレーンスケールを使用して数値を記録しています。とりあえず実用には耐えているんですが、一点不満があります。それは測定している最中に数値が固定して表示されないことです。

購入したクレーンスケールは、2秒程同じ大きさの力がかかるとセンサーが反応して数値が固定される仕様です。デジタル体重計と同じ原理なので、保持力のテストでも同じように簡単に固定されるかと思ったら違いました。やってみてわかったんですが、2秒以上安定して本気の全力を出し続けるのは難しいんですね。いつまでも数値が固定しないので、仕方なく、全力で保持しながら、ふらふら揺れ動く数値の最大値を目で読んでます。

この問題を解決できる装置として、本格的なアイソメトリックトレーニング用途向けの専用デジタルクレーンスケールがあります。


Alex Johnson Measuring a 2-arm PIMA with the Exsurgo Gstrength500

動画ではクレーンスケールがUSBケーブルでPCに接続されているのがわかります。スマホアプリとも連携でき、負荷の時間変化が全て数値データで記録できるので、いちいち目で数値を読む必要がありません。ただ、値段が$400〜$1000とかなり高価で、個人ユースには少しやり過ぎな印象です。

ひとまず、購入した安いクレーンスケールでも、目的は達成できているので、当面使い続けてみます。