体への負担が少なく、着実に保持力を向上させるハングボードプログラム「Go 100」

今年の夏のクライミングトレーニングでは、ハングボードでの保持力トレーニングを、少し易し目のものに変えてみました。本記事で紹介する「Go 100(Go a hundred)」というプログラムです。保持力の向上度合いは緩やかですが、負荷が低いので、怪我の危険性が少なく感じています。

ハングボードトレーニングに集中して取り組んだことのないクライマーに向いていると思いますので、やり方をまとめます。

このプログラムは、以前紹介した書籍「Logical Progression」で詳しいやり方が解説されています。また、ハングボードトレーニングについてまとめたeBook「Climb Strong | Hangboard Manual」でも同じ内容を読むことができます。

Go 100の特徴

Go 100は4週間から8週間かけて保持力をつけていくハングボードプログラムです。スタート時点の負荷はかなり軽く、体を慣らしながら徐々に負荷を上げていきます。

 


また、サイクルが2つに分かれている事も特徴です。サイクル1ではエッジサイズを徐々に小さくしていき、サイクル2では1回エッジサイズを元に戻して再びエッジサイズを徐々に小さくしていきます。その際、サイクル2では重りを追加して行うので、サイクル1よりも負荷の高いサイクルになります。

ハングボードトレーニングというと、できるだけ強い負荷で行うイメージがありませんか?例えば、数秒しかぶら下がれないような小さいエッジにぶら下がる事を繰り返して、ぶら下がれる時間を伸ばしていくようなやり方です。そのようなやり方でも、怪我をせずに続けられる丈夫な体を持った人なら問題ありません。しかし、高い負荷ばかりをかけていくことは、一般的に怪我のリスクが高いです。

Go 100では軽い負荷から始めて徐々に負荷を変えていく事で、様々なトレーニング刺激を体に与える事ができます。筋肉や腱などの組織の肥大に適した負荷から始まり、最後は最大筋力の出力を上げるのに適した負荷になっていきます。これらを繰り返していく事で、時間はかかりますが、安全に保持力を向上させていきます。

Go 100のプログラム詳細

Go 100は、5つのサイズのエッジを使用して行うハングボードトレーニングです。5つのサイズのエッジとは例えば、35mm、30mm、25mm、20mm、15mmといった感じです。最初は35mmから始め、2日間行ったら次は30mmで2日、その次は25mmというように負荷を上げていきます。最後の15mmが終わるまで、10日間が1サイクルです。

1日に行う内容はシンプルです。35mmの日を例にすると、35mmのエッジに20秒ぶら下がって数分レスト、これを5セット繰り返します。1日のトータルのぶら下がり時間が100秒になるのでGo 100です。

35mmや30mmの日は、相当簡単に感じるでしょう。エッジサイズが小さくなっていくと、20秒ぶら下がれなくなるかもしれません。そうしたら、トータルで100秒になるまで、ぶら下がる回数を増やします。例えば、5セットで20秒、18秒、18秒、15秒、15秒だったとします。これだとトータル86秒で14秒足りませんので、1セット14秒を追加して100秒にします。

1サイクル目

1サイクル目は、重りで負荷を追加する事はせず、自体重で行います。35mmや30mmの日は、負荷が軽いので、2日連続で行っても大丈夫です。サイズが小さくなってきたら、1日〜3日程度レストを挟んでいきます。最後の15mmが終わったら、3〜4日レストします。

2サイクル目

2サイクル目のプログラムは、基本的には1サイクル目と全く同じ事を繰り返します。違うのは、重りによる負荷を追加する事です。重りの重さは、1サイクル目の結果によって調整します。

1サイクル目に全てのエッジサイズで20秒問題なくぶら下がれた場合、体重の20%の重りを追加します。1サイクル目の後半に、20秒ぶら下がれなくなったが、全て5秒以上ぶら下がれていた場合は、体重の10%の重りを追加します。もし5秒以下しかぶら下がれないようになっていたら、重りは追加しません。

重りを追加すると、20mmや15mmのセッションはかなりきつくなります。もしかしたら、20セット×5秒くらいになるかもしれません。

2サイクルが終わった後

2サイクル目で、殆どの場合10秒以上ぶら下がれたのであれば、再び同じ重さの重りをつけてサイクルを繰り返します。10秒以下になる事があった場合は、再びサイクル1から再度行います。

各サイクルの前後では、保持力の測定を行います。測定値が伸びている間は、このプログラムが有効なので、サイクルを繰り返します。測定値が上げ止まったら、別のハングボードプログラムに移行する時期でしょう。

鍛えるホールディングは1種類だけ

ハングボードトレーニングでは、様々なホールディングを万遍なく鍛えたくなると思います。しかしGo 100はシンプルで、1種類のホールディングに集中して鍛えるプログラムです。苦手に感じるホールディングを選んでもいいですし、最も中間的なホールディングであるハーフクリンプで行ってもいいでしょう。自分はハーフクリンプで行っています。

エッジサイズ調整の仕方

Go 100では5つのエッジサイズを使います。しかし、4本指でぶら下がれるエッジが5サイズ揃っているようなハングボードは少ないです。ましてや、自分のレベルに合ったサイズとなると、なかなか手に入りません。

これについては、自分でエッジサイズを調整してしまうのが手っ取り早いです。つまり、35mmのエッジがあったとすると、5ミリの厚さの木端をはめ込んで30mmにしてしまうということです。

f:id:takato77:20221212124617j:image

自分の場合、ビーストメーカー2000を自宅に設置しており、そこには34mmと15mmのエッジがあります。また、Latticeのフィンガーボードも設置してあり、こちらは20mm(悪め)です。34mmと20mmの間を埋めるため、2種類の木端を作りました。

f:id:takato77:20221212124645j:image

それぞれ6mmと12mmです。これを34mmのエッジにはめ込むと、28mmと22mmになります。これにより、34mm→28mm→22mm→20mm(悪め)→15mmの5サイズを実現しています。

木端は、ホームセンターで3mmの合板を買ってきて、ノコギリで切ってから木工用ボンドで貼り付けただけ。見た目は雑ですが、実用性は十分です。