2022年9月〜12月のクライミングとトレーニングの振り返り

9月後半から岩でのクライミングに集中してきました。12月に入ってからは、まだ岩はパリパリに乾いているものの、寒さが厳しくなってきています。オンサイトやフラッシュを狙うには辛くなってきたので、春先まで再びトレーニングに比重を移していこうと思います。今フェーズのクライミングとトレーニングについて振り返っておきます。

全体の振り返り

今フェーズ3ヶ月強におけるクライミングの回数はジム11回、岩でのリードクライミング6回、岩でのボルダリング11回でした。週に1〜2回は岩に行っていたことになります。娘が生まれてから、このくらいの頻度で岩に行けたのは初めてのことで、大変充実しました。家族に感謝です。

娘がパパっ子で、今までは週末の岩場行きがほぼNGでした。最近だいぶ分別がついてきて、土日のどちらか、昼食までに戻る約束であれば外出が渋々OKになったので、近場のボルダーに行くようになりました。また、リードクライミングは時間がかかるので、平日に有給休暇を取って行っています。

岩でのクライミング振り返り

グレードの観点では、一撃で登れるグレードの更新が今フェーズのテーマでした。ボルダリングでは1級のフラッシュ、リードクライミングでは5.11cのオンサイトです。

ボルダリング

9月はフラッシュを狙うにはコンディションがイマイチだったので、初段くらいの課題に何本かトライしたいと考えていました。15年前からの宿題だったエゴイストが頭に浮かび、トライ開始。サクッと登れることを期待してましたが、結果は登れるまでに7日通うことになりました。時間はかかりましたが、積年の課題に決着をつけることができたのは嬉しかったです。

 
 
 
 
 
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エゴイストのトライが終わったら既に10月末。フラッシュトライには絶好のシーズンになっていたので、未トライの1級課題を順々に巡っていくことに。神流川の「Welcome To Kannamachi」と鳩の巣の「磐座詣り」は失敗したものの、歯車が噛み合えばなんとかなるかもという感触を得て、3課題目。某所の「GT」をフラッシュして、無事目標を達成することができました。

 
 
 
 
 
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また並行して、こーへーさんに秋川周辺の開拓ボルダーを紹介してもらって一緒にトライ。今年はグレードにこだわるクライミングで精神的なプレッシャーを感じることが多かったところでしたが、未登ラインのムーブを探るセッションでは、純粋にクライミングを楽しむことができました。クライミングの能力向上を測るためにグレードに拘るのも大事です。しかし、余裕と愛嬌のある楽しいクライミングの時間も、同じように大事にしていきたいです。

 

 
 
 
 
 
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ルートクライミング

ルートクライミングでは、障子岩に集中的に通いました。障子岩は5.11台のルートが充実していて、未トライのものがたくさんあるので、1日に1本新しいルートをオンサイトトライする感じで臨みました。

5.11aだと長いルートでもレストしながら粘れる感じ。「ワイルドハート」は腕がパンパンになりながらオンサイトできて、充実したよいクライミングでした。障子岩の南面は、「デルパワーX」「穴」「ワイルドハート」といった3本の個性的な5.11aが並んでいます。今回の「ワイルドハート」で、これら3本を全てオンサイトで完登できたことになり、とても嬉しい成果となりました。


www.youtube.com

 

5.11bは出だしに厳しいボルダームーブが出てくる「ニトロ」にトライ。上部が共通のTNTは登っていたので純粋なオンサイトではないですが、下部のオリジナルパートを一撃できました。一方、襖岩では「穴Part2」「大御所」の2本の5.11bのオンサイトは失敗。自分にとって5.11bが、オンサイトできたりできなかったりの境目のグレードであるという感触を得ました。

 

 
 
 
 
 
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今年の目標である5.11cのルートを一回だけでもトライしておきたいと、南西面の「ショアー」にトライしましたが、出だしのムーブがわからず行ったり来たり。テンションをかけずクライムダウンして、オンサイトトライは来年以降に持ち越しです。

 

 

体力トレーニングの振り返り

今フェーズは岩でパフォーマンスを出すことに集中し、体力トレーニングは現状維持できる程度の量に減らしました。基本的に、岩に行ける日は岩に行くようにし、ストレングストレーニングと持久力トレーニングが7日〜10日に1回ずつくらい入るような感じです。

ストレングストレーニン

全身のウェイトトレーニングとハングボードによる保持力トレーニングを自宅で行いました。

  • 上半身プッシュ:オーバーヘッドプレスの日と腕立て伏せの日を交互に入れ替え
  • ヒップヒンジ:ルーマニアデッドリフト、フロントレバー(ゴムバンドアシストあり)
  • 上半身プル:ベントオーバーロウの日と懸垂の日を交互に入れ替え
  • スクワット:バーベルフロントスクワット
  • 保持力トレーニング:Go 50、リバースリストカール

どの種目も、夏のトレーニング期間と比べて、負荷は余り落とさずに量を半分程度に減らしました。保持力トレーニングは、前回紹介したGo 100の量を半分にしたGo 50を自体重のみで実施。体感的には、これで大きな体力低下はなく過ごせたように思います。

持久力トレーニング兼スキル練習

ジムに行ける時は持久力トレーニングとスキル練習を兼ねて、やさしめのグレードの課題をたくさん登るようにしました。8級〜5級をおり混ぜて、約1時間で30課題くらい登る感じです。メンテナンスが目的なので、追い込まないようにしました。

体への負担が少なく、着実に保持力を向上させるハングボードプログラム「Go 100」

今年の夏のクライミングトレーニングでは、ハングボードでの保持力トレーニングを、少し易し目のものに変えてみました。本記事で紹介する「Go 100(Go a hundred)」というプログラムです。保持力の向上度合いは緩やかですが、負荷が低いので、怪我の危険性が少なく感じています。

ハングボードトレーニングに集中して取り組んだことのないクライマーに向いていると思いますので、やり方をまとめます。

このプログラムは、以前紹介した書籍「Logical Progression」で詳しいやり方が解説されています。また、ハングボードトレーニングについてまとめたeBook「Climb Strong | Hangboard Manual」でも同じ内容を読むことができます。

Go 100の特徴

Go 100は4週間から8週間かけて保持力をつけていくハングボードプログラムです。スタート時点の負荷はかなり軽く、体を慣らしながら徐々に負荷を上げていきます。

 


また、サイクルが2つに分かれている事も特徴です。サイクル1ではエッジサイズを徐々に小さくしていき、サイクル2では1回エッジサイズを元に戻して再びエッジサイズを徐々に小さくしていきます。その際、サイクル2では重りを追加して行うので、サイクル1よりも負荷の高いサイクルになります。

ハングボードトレーニングというと、できるだけ強い負荷で行うイメージがありませんか?例えば、数秒しかぶら下がれないような小さいエッジにぶら下がる事を繰り返して、ぶら下がれる時間を伸ばしていくようなやり方です。そのようなやり方でも、怪我をせずに続けられる丈夫な体を持った人なら問題ありません。しかし、高い負荷ばかりをかけていくことは、一般的に怪我のリスクが高いです。

Go 100では軽い負荷から始めて徐々に負荷を変えていく事で、様々なトレーニング刺激を体に与える事ができます。筋肉や腱などの組織の肥大に適した負荷から始まり、最後は最大筋力の出力を上げるのに適した負荷になっていきます。これらを繰り返していく事で、時間はかかりますが、安全に保持力を向上させていきます。

Go 100のプログラム詳細

Go 100は、5つのサイズのエッジを使用して行うハングボードトレーニングです。5つのサイズのエッジとは例えば、35mm、30mm、25mm、20mm、15mmといった感じです。最初は35mmから始め、2日間行ったら次は30mmで2日、その次は25mmというように負荷を上げていきます。最後の15mmが終わるまで、10日間が1サイクルです。

1日に行う内容はシンプルです。35mmの日を例にすると、35mmのエッジに20秒ぶら下がって数分レスト、これを5セット繰り返します。1日のトータルのぶら下がり時間が100秒になるのでGo 100です。

35mmや30mmの日は、相当簡単に感じるでしょう。エッジサイズが小さくなっていくと、20秒ぶら下がれなくなるかもしれません。そうしたら、トータルで100秒になるまで、ぶら下がる回数を増やします。例えば、5セットで20秒、18秒、18秒、15秒、15秒だったとします。これだとトータル86秒で14秒足りませんので、1セット14秒を追加して100秒にします。

1サイクル目

1サイクル目は、重りで負荷を追加する事はせず、自体重で行います。35mmや30mmの日は、負荷が軽いので、2日連続で行っても大丈夫です。サイズが小さくなってきたら、1日〜3日程度レストを挟んでいきます。最後の15mmが終わったら、3〜4日レストします。

2サイクル目

2サイクル目のプログラムは、基本的には1サイクル目と全く同じ事を繰り返します。違うのは、重りによる負荷を追加する事です。重りの重さは、1サイクル目の結果によって調整します。

1サイクル目に全てのエッジサイズで20秒問題なくぶら下がれた場合、体重の20%の重りを追加します。1サイクル目の後半に、20秒ぶら下がれなくなったが、全て5秒以上ぶら下がれていた場合は、体重の10%の重りを追加します。もし5秒以下しかぶら下がれないようになっていたら、重りは追加しません。

重りを追加すると、20mmや15mmのセッションはかなりきつくなります。もしかしたら、20セット×5秒くらいになるかもしれません。

2サイクルが終わった後

2サイクル目で、殆どの場合10秒以上ぶら下がれたのであれば、再び同じ重さの重りをつけてサイクルを繰り返します。10秒以下になる事があった場合は、再びサイクル1から再度行います。

各サイクルの前後では、保持力の測定を行います。測定値が伸びている間は、このプログラムが有効なので、サイクルを繰り返します。測定値が上げ止まったら、別のハングボードプログラムに移行する時期でしょう。

鍛えるホールディングは1種類だけ

ハングボードトレーニングでは、様々なホールディングを万遍なく鍛えたくなると思います。しかしGo 100はシンプルで、1種類のホールディングに集中して鍛えるプログラムです。苦手に感じるホールディングを選んでもいいですし、最も中間的なホールディングであるハーフクリンプで行ってもいいでしょう。自分はハーフクリンプで行っています。

エッジサイズ調整の仕方

Go 100では5つのエッジサイズを使います。しかし、4本指でぶら下がれるエッジが5サイズ揃っているようなハングボードは少ないです。ましてや、自分のレベルに合ったサイズとなると、なかなか手に入りません。

これについては、自分でエッジサイズを調整してしまうのが手っ取り早いです。つまり、35mmのエッジがあったとすると、5ミリの厚さの木端をはめ込んで30mmにしてしまうということです。

f:id:takato77:20221212124617j:image

自分の場合、ビーストメーカー2000を自宅に設置しており、そこには34mmと15mmのエッジがあります。また、Latticeのフィンガーボードも設置してあり、こちらは20mm(悪め)です。34mmと20mmの間を埋めるため、2種類の木端を作りました。

f:id:takato77:20221212124645j:image

それぞれ6mmと12mmです。これを34mmのエッジにはめ込むと、28mmと22mmになります。これにより、34mm→28mm→22mm→20mm(悪め)→15mmの5サイズを実現しています。

木端は、ホームセンターで3mmの合板を買ってきて、ノコギリで切ってから木工用ボンドで貼り付けただけ。見た目は雑ですが、実用性は十分です。

 

 

ロックビーンズのベーシックトレーニングを受講してきた話

前回の記事で、2022年夏のトレーニングについてまとめた際に、ロックビーンズのベーシックトレーニングを受講した事に触れました。とても有意義なレッスンで、受講後はクライミング練習における動きの意識が大きく変わりました

今回は、レッスンの形式や流れをメインに紹介します。具体的なレッスンの中身については、一つ一つのトピックが専門的ですし、自分も咀嚼しきれていないので、今回は深掘りしないようにします。

 

概要

ベーシックトレーニングは、八王子のクライミングジム「ロックビーンズ」でサービス提供している、予約制クライミングレッスンです。ロックビーンズで課題を登りながら、フォームチェックと改善のアドバイスが受けられます。

 

詳細は以下のリンクを参照ください。

 

 

ロックビーンズでは部活道チャンネルというYouTubeチャンネルで、クライミングにおける動きの基礎を解説してくれています。このチャンネルを見るだけでも大変参考になります。しかし、いざやってみると、なかなか動画内のお手本のようには動けないんですよね。ベーシックトレーニングを受講すれば、動画を見ただけでは気づけない、自分の動きのクセやエラーを認識できます。また、その修正方法も学べます

 

 

受講の流れ

申込

上のリンクにもある通り、メールで希望時間を伝えて、日程を調整します。レッスンでジム営業時間をみっちり埋まるような受け方はしないとの事でした。なので受講枠は多くても1日2〜3枠と思われます。

受付〜開始まで

受講場所はロックビーンズのジム内です。ジムの営業時間中に行うため、通常利用のお客さんの受付等と並行しての対応になります。そのため開始時間は、申込時に決めた時間から若干前後するのが基本です。

開始時間の30分〜1時間前くらいに受付して、セルフでゆっくりウォームアップ後に開始です。

講中

まず最初はカウンセリングで、クライミングにおける悩みや改善したいと思っていることを聞かれます。具体的な悩みがあればそれを、無ければフォームをチェックしてほしいと伝えればよいでしょう。

自分の場合は、以下2つを改善したいと伝えました。

  • 丁寧に足を置いているつもりなのに、動くと足が滑ってしまう事が多い
  • 胸郭を動かして登れている気がしない

続いて、動きのクセをチェックしていきます。自分の場合、ウォームアップ中の登りを見られていて既に指摘内容がほぼ決まっていたようです。壁に取りつく前に、動きのクセや筋力的に弱い部分を教えてもらい、改善するエクササイズを指導してもらいました。

それからは1本ずつ指定された課題を登りながら、動きのエラーを確認・修正していきます。まず1回登りを見てもらい、修正ポイントを教えてもらって、登り直す流れです。強度が高い動きは、課題の中の1〜2ムーブだけを切り出して登ります。

受講後

1時間の受講が終わったら、あとは通常のジム利用になります。ロックビーンズの良質な課題を登って楽しみましょう。

金額

1回1時間あたりの金額は、2022年11月時点で3,800円(ジム利用料を除く)で、これは衝撃的な安さです。クライミング業界での相場はわかりませんが、フィットネス系一般で身体操作の修得を目的としたマンツーマンでの対面レッスンだと、1時間8,000円〜10,000円なんてのもザラだと思います。

 

受講してよかったこと

自分の動きのクセやエラーに気づく事ができた

ライミングの動きは、自己流にしろ誰かに習ったにしろ、誰でも自分なりに染みついた動きのパターンがあるものです。そのパターンが、無駄な力を使わずに効率的に登れるものであったり、関節などの組織にかかる負荷が適切で怪我を誘発しにくいものであれば理想です。

しかし、どのような動きが理想的な動きなのかとうのがわからなければ、どれだけ練習しても、理想的な動きを習得することはできません。以下のmickipediaの記事が参考になります。

ベーシックトレーニングでは、理想的な動き(TO -BE)と自分の動きの現状(AS-IS)のギャップを明確に指摘してもらえます。

例えば自分の場合、「丁寧に足を置いているつもりなのに、動くと足が滑ってしまう事が多い」ことが悩みでした。その悩みをベーシックトレーニングで相談したところ、以下を指摘されました。

 

  • 踵を上げて足先に力を入れようとしているが、形だけになっている。
  • 腰が詰まっておらず、お尻の力を発揮できていない。爪先からお尻まで連動して動けていない。

 

これは結果的には、以下の部活道チャンネルの動画で触れられている事と同じです。

この動画は見た事がありましたし、その内容をふまえて動いているつもりでした。しかし、実際にベーシックトレーニングで見てもらうことで、出来ていない事に気づく事ができました。

この動きのエラーは、仮に自己流で練習し続けていたら、おそらくずっと気づけなかったでしょう。専門家の目線で見てもらう事で、自分では気づけない動きのクセやエラーを、すみやかに炙り出す事ができます。

普段の練習やトレーニングでやるべき事が明確になった

動きのクセやエラーを認識できたら、次はその修正です。動きのクセは染み付いたものですから、修正には時間がかかります。ベーシックトレーニングの受講後、普段の練習やトレーニングで、継続して修正していく事が必要です。

動きのクセやエラーが起きる原因は大別すると2つです。

動きの意識の問題の修正

1点目は、正しい動きをする際に意識した方が良い事がわかっていない問題です。

これについては、ベーシックトレーニングで課題を登りながら、修正する際に意識しておくべきことを教えてもらえます。それらをメモ等にまとめておいて、普段の練習でも活用する事ができます。

何を意識して練習すれば良いかがわかっていれば、練習の質が変わってきます。動きのクセやエラーが自分でもわかるようになるので、一度登れた課題をエラーが無くなるまで登り込む事で、理想的な動きを体に染み込ませる事ができます。

体力的な問題の修正

2点目は体の特定の部位における柔軟性や筋力が足りない問題です。こちらはライミング以外の補助的なエクササイズによる修正が有効になります。これらもベーシックトレーニングでは、個々の動きのクセやエラーの修正に有効なエクササイズを提案してもらえます。

筋トレやストレッチの情報はYouTubeInstagramに溢れています。しかし、自分にとって真に有効なエクササイズがわからないと、どれを選べばいいのかわかりません。無理やり選んでも、本当に効くのか半信半疑では、結果的に継続もしづらいでしょう。

自分の場合を例にすると、腰を詰めた状態で爪先を上げる際に不足している点として、ヒラメ筋と中臀筋の筋力を指摘されました。それらを改善するエクササイズとして、ヒップヒンジした状態でのカーフレイズと、サイドプランクを教えてもらいました。これらはクライミング前のウォームアップの一環として継続しています。

2022年6月〜9月のトレーニング・練習の振り返り

例年は、梅雨から夏にかけても、コンディションが悪いなりに、月に数回は岩登りに行ってました。しかし、今年は仕事やプライベートの予定と天気の巡り合わせが悪く、ほとんど岩には行きませんでした。結果的に、トレーニングや練習に集中でき、それはそれでよかったかなと感じています。備忘としてまとめておきます。

 

全体スケジュールの振り返り

年始に立てた計画では、6月〜10月上旬まではオフシーズンとしてトレーニングボリュームを増やす計画でした。疲労が溜まってきたので、少し早めに9月下旬からトレーニングボリュームを落としましたが、概ね計画通りです。

 

2022年全体スケジュール

 

体力トレーニングの振り返り

レーニングサイクル

今フェーズは、基礎的な体力向上をテーマとし、ストレングストレーニングをトレーニングのベースに据えました。

6月までは、シンプルなノンリニアサイクルで、以下を1日おきに繰り返していました。

今フェーズは、パワー、持久力のベースとなるストレングスをしっかり底上げすることを一番の目的にしました。そのため、ストレングストレーニングの頻度を増やしたサイクルを繰り返しました。

保持力トレーニン

指の保持力のトレーニングについては、少し内容を見直しました。フィンガーボードを使用すること自体に変わりはありません。変えたのは強度です。
具体的に言うと、今までは、10秒程度で限界となるような強度になるように、エッジの幅や荷重を調整して、その強度でトレーニングしていました。今フェーズは、20秒程度ぶら下がれるような強度を中心にしてトレーニングしています。

これは、以前紹介したLogical Progressionで紹介されているGo A Hundredというトレーニング方法で、1日にトータルで100秒ハングボードにぶら下がります

  • 1,2日目 35mm 20秒×5回
  • 3,4日目 30mm 20秒×5回
  • 5,6日目 25mm 20秒×5回
  • 7,8日目 20mm 20秒×5回
  • 9,10日目 15mm 20秒×5回

といった感じで、徐々にぶら下がるエッジの幅を小さくしていきます。20秒ぶら下がれなければ、回数を増やして、トータルで100秒/日になるようにします。詳しくは別に記事を書こうと考えています。

やってみるとわかりますが、けっこう簡単で、こんなのでトレーニングになるのかなと感じます。しかし、継続して保持力のトレーニングを積んでいない人であれば、このやり方で十分に保持力は向上するようです。実際、自分の場合も5kgほど保持力が向上しました。レーニング効果があるのであれば、簡単で体に負荷が小さいやり方の方が、怪我のリスクも少なく続けやすいですよね。

全身のトレーニン

基本的な体力向上を目標に、ストレングストレーニングの日に、バーベルを使用したウェイトトレーニングを継続しました。

上半身プッシュ

ストレングストレーニングの日に、1日毎に、バーベルでのオーバーヘッドプレスと腕立て伏せを繰り返しました。オーバーヘッドプレスは挙上重量が頭打ちしてきたので、水平方向のプッシュを取り入れてます。ベンチプレスができればいいのですが、家にベンチプレス台を置けないので、ラバーバンドで強度を上げながら腕立て伏せをしています。

上半身プル

左肘内側の調子がしばらくイマイチだったので、8月まではお休み。肘の違和感がほぼ消えた9月から、バーベルでのベントオーバーロウを週2で始めました。やってみてわかったのは、水平方向に腕を引く動作の可動域が狭かったこと。最初、バーベルを持って水平方向に腕を引いたところ、バーがみぞおちに全然つかないんですね。クライミングでの引き付け動作における最後のひと引きができてないことになるので、これはしっかり継続しようと思います。

スクワット

6月〜8月はバーベルを担いでリバースランジをやりました。概ねフォームが安定してきたので、9月からフロントスクワットにメニューを変えました。

ヒンジ

ルーマニアデッドリフトを続けてきて、徐々に太もも裏(ハムストリングス)の柔軟性が上がってきました。重量はあまり増やしてこなかったので、強度を上げるため、フロントレバーをメニューに追加。ラバーバンドで負荷を減らしてやってます。

手首

いままであまり継続してこなかったリバースリストカールを真面目にやりました。指の保持力を鍛えるときに、手首周りの安定性が不足しているように感じていたので。小さい筋肉なので重量は欲張らず、5.0kg→5.5kg→6.0kgと、じわじわと増やして、左右10回×3セット程度。

 

スキル練習の振り返り

ロックビーンズでベーシックトレーニングというサービスが始まったので、クライミング動作を基礎から見直したく、2回受講してきました。

ameblo.jp

基本的な動きができていないところを、みっちりと指導いただき、目から鱗。大変充実した時間となりました。こちらも別記事でまとめようと思います。

ベーシックトレーニングでの指摘事項を意識しながら、ホームジムで練習しました。量を登る日に、4Qサーキットをやるようにしたところ、基本的な動きはだいぶ改善されてきたかなぁと感じています。

 
 
 
 
 
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2022年1月〜6月のクライミングとトレーニングの振り返り

季節が梅雨に入り、岩でハイパフォーマンスを目指すのはひと段落させました。トレーニングに比重を移すので、いったん2022年のここまでの状況をまとめておきます。

 

全体スケジュールの振り返り

2022年のクライミングとトレーニングのサイクルは、5月いっぱいまでクライミングに比重を置いて取り組む計画でした。なので概ね計画通りと言えます。

 

2022年全体スケジュール



 

6月に入ってから1週間レストし、少し体をリフレッシュしたので、これから夏のトレーニングブロックに入っていきます。

 

岩でのクライミング振り返り

2022年は一撃で登る能力を向上することをテーマに、以下3点を目標としました。

 

  1. 岩場での二段の完登
  2. 岩場での1級のフラッシュ
  3. 岩場での5.11cのオンサイト

 

1については、ボルダー力の現状を維持することを目的として設定。1月に湯河原でトワイライトを登り、ひとまず目標達成できました。

 

 

早々に1の目標を達成できたので、その後は2,3の目標にシフトしました。しかしここ数年、一撃にこだわったクライミングを殆どしていなかったので、2,3の目標については、正直どれくらい現実味があるのかわかりませんでした。そこで、それぞれについて、いくつか下のグレードの課題に一撃狙いでトライしてみて、現状を把握しました。

 

2のボルダーにおけるフラッシュについては、2級の課題にいくつかトライ。4課題のうちフラッシュできたのは、1課題のみでした。なかなか厳しい。しかし、良い感触はあるので、下期は心技体整えて1級フラッシュにもチャレンジします。

 

2022年1月〜6月ボルダリングの成果



 

慣れ親しんだ御岳で、まだ触ったことのなかった課題で遊ぶことができたのは、とても新鮮で良い経験でした。特に御岳人形は素晴らしいライン。

 

 

 

3のリードクライミングにおけるオンサイトについては、湯河原幕岩に1回、障子岩に2回行くことができました。山森さん、こーへーさん、平日休みに付き合っていただきありがとうございます。

 

2022年1月〜6月ルートクライミングの成果



 

久しぶりのオンサイトリードはとにかく楽しい!障子岩「穴」のオンサイトは、出だしで悩んで何度も行ったり来たり。多分そんなに難しくない一手でも、絶対失敗できないプレッシャーでなかなか踏ん切りがつかず。覚悟を決めて出した一手が止まった時の気分は最高でした。

グレード的には、5.11aがオンサイトできたりできなかったりというところだったので、こちらもボルダー同様に厳しい結果。リードは行く機会もなかなか作りにくいので、下期は5.11a〜5.11bのオンサイトトライを積み重ねるのがよさそうです。

 

 

その他、湯河原に行った際に、山森さんとザイオンゲート横のクラックを登りました。ラインは明瞭、高さがあって思い切りがいる良いラインでした。

 

 

体力トレーニングの振り返り

ライミングシーズンはシンプルなノンリニアサイクルで過ごしました。概ね、以下を1日おきに繰り返し。

ライミングのオンシーズンなので、目標は現状維持。サイクル終了後の体力測定では、多少増減はありましたが、概ね維持できました。前腕の持久力が少し落ちてるかな。。

 

体力数値の推移



 

ストレングストレーニングは、時間をかけずシンプルに、以下三種目のバーベルウェイトリフティングのみ。

上半身のプル系動作(懸垂など)は、肘がまだ違和感があるので、引き続きお休み中。フィンガーボードは、高難度ボルダリングの日にウォームアップを兼ねて、ハーフクリンプとオープンハンドをそれぞれ7秒×3セットでクイックに済ませました。ジムでも岩場でもi-VOWが便利です。

スキル練習の振り返り

まず今フェーズは、しっかりクライミングする時間を確保できたのがよかったです(ジム28回、岩場15回)。クライミングシューズを履かない体力トレーニング時間と、クライミング時間の比率は、ざっくり20:80。ようやく25:75ルールをクリアして、十分な練習時間をとることができました。

スキル練習のテーマとしては「ニーインしない」「腰を詰める」を中心に実施。だいぶ改善してきたように感じます。しかし、胸の動きが不十分で、しなやかに動けていないと感じることが多いので、次のテーマです。

ジムでのボルダリングでは、ひたすらテープ課題を登り、あまりウィークリー課題やマップ課題に手を出さないようにしました。手を出す課題が多くなり過ぎると反復練習が不十分になると思ったからです。飽きるかなと思いましたが、ちょくちょく動画を撮って見返すようにしたら、細かい動きの崩れが気になって修正したくなるので、飽きずに楽しめました。

毎回ジムで動画を撮るようにしたら、スマホのストレージ容量がすぐ一杯になるので、インスタに動画供養用のアカウントを作っています。日が経つに連れて徐々に動きを振り返ることができて便利です。

 

 

 

「静的ストレッチでパワーが落ちる」をどれくらい気にする必要があるのか

ウォーミングアップ中に静的ストレッチをすると、その後の運動におけるパワー出力が落ちる、という話を聞いたことはありませんか。クライミング関連の書籍や雑誌でも、ウォームアップには静的ストレッチではなく動的ストレッチがよい、と書かれているのを時折見かけます。

一方、短時間の静的ストレッチであれば、それ程影響が無いという意見もあります。実際のところ、どれくらいクライミングのパフォーマンスに影響が出るんでしょうか。登りたい課題に柔軟性を求められる動きが出てくるとしても、絶対に静的ストレッチは行わない方がよいのでしょうか?

個人的にモヤモヤと感じていたこのトピックについて取り上げたポッドキャストがあったので、内容をかいつまんで紹介します。

 

 

文字起こし全文(英語)

 

このポッドキャストでは、クライミングの世界で広まっている拡大解釈や誤解を題材に議論します。毎回一つの科学論文を題材に、論文が言っていることと言っていないことをできるだけ誠実に解説することで、そのような拡大解釈や誤解を解きほぐして訂正することを試みています。

ホストは、ワイオミング州のクライミングコーチであるクリス・ハンプトンと、ストレングス&コンディショニングコーチのポール・コルサロです。

静的ストレッチによる筋力やパワーへの影響に関する理解の移り変わり

静的ストレッチは、筋肉を伸ばした状態で、反動などをつけずに、一定時間保持するストレッチです。静的ストレッチに限らず、ストレッチについては、毎年多くの研究が盛んに行われています。その結果、運動前の静的ストレッチが、その後の運動パフォーマンスにどのような影響があるかという点については、時代によってその評価が変わってきています。

運動前の静的ストレッチに関するこれまでの理解

運動前に静的ストレッチを行うことについては、20世紀初頭の二度の世界大戦の頃から1990年代まで一般的なウォームアップでした。柔軟性が向上して、運動のパフォーマンスも上がると信じられていたのです。

それが、1990年代の後半から2000年代にかけて変わってきます。「運動前に静的ストレッチを行うと、運動時の筋力やパワー出力が落ちる」という実験結果が出てきたためです。

例えば2001年に発表された論文(*1)では、大腿四頭筋の静的ストレッチを、トータル20分弱行った後では、膝を伸ばす運動の筋力が12%低下した、というものがあります。

そのため、強度の高い運動を行う前には、静的ストレッチを行わず、動的ストレッチなどを行うことが推奨されることが多くなってきました。

最近の研究結果

その後、静的ストレッチに関する研究は進み、筋力やパワー出力に影響しやすい静的ストレッチの種類がわかってきています。2019年に発表された論文(*2)では、これまでに発表されてきた静的ストレッチに関する論文をくまなく調査して評価(システマティックレビュー)しています。

静的ストレッチを行う時間による影響

わかってきたことの一つは、静的ストレッチを行う時間の長さによる影響です。ある部位に対して静的ストレッチを行う時間が60秒以下であれば、その後の筋力やパワー出力の低下は1〜2%と、軽微である事が示唆されています。一方、60秒以上の場合は4.0〜7.5%となっており、筋力やパワー出力の低下が大きくなります。

フルウォームアップと合わせて行うことによる影響

もう一つの観点として、静的ストレッチだけをウォームアップで行うのか、その他のウォームアップの一部として行うのかによる違い場合があります。ダイナミックストレッチや有酸素運動と組み合わせて、60秒以下の静的ストレッチを行うのであれば、筋力やパワー出力への影響がない事が示唆されています。

それに加えて、静的ストレッチをウォームアップとして行うことによるメリットも紹介されています。

  • 急性の怪我のリスクを低下させる可能性がある
  • その後の競技で、良い成果が出せそうに感じるといったような、精神的効果

ライミングへの影響

このような研究結果の移り変わりをふまえ、クライミング前のウォームアップとして、どのように静的ストレッチを取り入れた方がよいのでしょうか。ポッドキャスト内では、以下のように提案しています。

  • ウォームアップの一部として60秒以内の静的ストレッチを取り入れるのであれば、パワー出力の低下を過剰に気にする必要はないのではないか
  • 下半身に対してであれば、60秒以内にこだわらず、必要に応じてしっかり静的ストレッチを取り入れてよいのではないか

それぞれ補足していきます。

ウォームアップの一部として60秒以内の静的ストレッチを取り入れるのであれば、パワー出力の低下を過剰に気にする必要はないのではないか

先に挙げたとおり、有酸素運動やダイナミックストレッチのようなウォームアップセッションの一環として60秒以内の静的ストレッチを行うのであれば、筋力やパワー出力には殆ど影響がない事が示唆されています。それであれば、静的ストレッチをする事で得られるメリットに目を向けた方が得策です。

下半身に対してであれば、60秒以内にこだわらず、必要に応じてしっかり静的ストレッチを取り入れてよいのではないか

ライミングは全身を使うスポーツですが、下半身の筋力やパワーを100%発揮する必要があるシーンは殆ど無いでしょう。スラブを全力で駆け上がって速さを競うような事がない限り。

ライミングの場合、下半身については、多少パワー出力が落ちることを気にするよりも、柔軟性が上がった方がメリットがある場合の方が多いです。

例えば、手と同じ高さ、もしくは更に高い位置にヒールフックをかけて、乗り込んでいくような動きが挙げられます。太ももの裏がピキピキ言いそうになりますが、そのような動きが出てくることがわかっていれば、事前に太ももの裏(ハムストリング)を伸ばす静的ストレッチを行っておくことは理にかなっています。

余談

ここまででポッドキャストからの内容の紹介はおしまいです。余談になりますが、この記事を書くにあたって、手持ちの書籍を読み返したら、以下の記述がありました。

ライミング前のストレッチは、部位ごとに特性を考えたい。高い筋出力を必要とする上半身では、過伸展による出力低下を防ぐため、10秒程度の短い静的ストレッチを3セットほど行い、その後、さまざまな方向に回転・ひねりを行なう動的ストレッチを10回程度反復するのがよい。下半身に関しては、クライミングでは筋力発揮よりも、広い可動域のほうが必要になる。アウフバウトレーニングと静的ストレッチを長めに行なおう。

 

北山真・杉野保・新井裕己 著「ヤマケイ・テクニカルブック登山技術全書⑦フリークライミング山と渓谷社

さすが新井裕己さん。2005年の書籍ですが、現在の最新の研究状況と違わない、実用的なストレッチ方法を提案されていたのでした。

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。お断りしておきますが、筆者はクライミング関連業務に従事しているわけではなく、医療関係者でもありませんので、記載内容を実際に適用される際には一次ソースを確認の上、自己責任でお願いします。 

参考文献

(*1)"Factors Affecting Force Loss with Prolonged Stretching" authored by David Behm and Duane C Button; published in the Canadian Journal of Applied Physiology, 2001.

(*2)"Acute Effects of Static Stretching on Muscle Strength and Power: An Attempt to Clarify Previous Caveats" authored by Helmi Chaabene, David Behm, Yassine Negra, and Urs Granacher; published in Frontiers in Physiology in 2019.

 

 

 

【書籍紹介】ピーキングのためのテーパリング

ライミングをしていると、最高の調子で臨みたいシーンというのがあると思います。岩場であれば、ベストシーズンじゃないと登れない、自身の限界ギリギリの課題に挑戦するときがそうでしょう。インドアなら、好成績を収めたいコンペなどでしょうか。

狙った時期に、体力面のコンディションをピークにするため、レーニング量を徐々に減らしていくことをテーパリングと言います。テーパリングの必要性自体は、世間一般で、ある程度常識になっていると思います。さすがに野球やサッカーの試合の前日に、激しく練習させるコーチはいませんよね。

一方、ピークを迎えたい時期に対して、「どれくらい前から」「どのくらい」トレーニングを減らしていくのがよいのか、ということについては、よくわからない人も多いのではないでしょうか。本書を読めば、テーパリングでコンディションが良くなる仕組みを、科学的に理解する事ができます。今までテーパリングを「なんとなく」で行なっていた方は、根拠と自信を持って、適切なコンディション調整ができるようになるはずです。

 

 

 

本書の概要

本書はクライミングに特化した書籍ではなく、競技スポーツ全般に共通するテーパリングの考え方が、科学的にわかりやすく解説されています。

本書のページ数は125ページで、それほどボリュームがあるわけではありません。しかし、その全編にわたって、テーパリングのメカニズムや、実際にテーパリングを行う際のガイドラインが、わかりやすく解説されています。まえがきには、以下のように述べられています。

テーパリングのメカニズムさえ理解しておけば、さまざまな状況に対して応用が効きます。目の前の状況を分析したうえで、「今はこういう状態だから、こういう形でテーパリングを実施すれば、重要な試合にコンディションのピークを合わせることができるはずだ」と自分の頭を使って考えることができるようになります。マニュアル化しづらいテーパリングの再現率を高めるためには、そのメカニズムを理解したうえで、応用を働かせることが鍵となるのです。

著者は、ストレングス&コンディショニングコーチの河森直樹さんです。以前の記事で紹介した書籍「競技力向上のためのウェイトトレーニング」の著者でもあります。

本書を手に取ったきっかけ

昨年の秋は、故障箇所が概ね無くなってから初めてのクライミングベストシーズンでした。夏の間はしっかりトレーニングを続けてきましたが、岩場でのクライミングで成果を出したい時期になって、トレーニングはどの程度続ければよいのか、ふと疑問に思ったのがきっかけです。

ライミング関連の書籍でも、テーパリングに言及したものはあります。しかし、日程が決まったコンペに向けたやり方が書いてある事が多いです。また、テーパリングがどのような仕組みで起きるのか、根拠や考え方の説明はあまりされていません。そのため、シーズンの長い岩場でのクライミングには応用が効きませんでした。

岩場でのクライミングは、天候によって意中のラインにトライできるかどうか左右されるので、どこか1日に体力のピークを合わせるようなやり方は現実的ではありません。むしろ、数週間程度の長い期間、ゆるやかに体力が上がっている状態に調整できたほうが都合が良いです。

本書でテーパリングのメカニズムを学べば、どのようにそのようなゆるやかなピークを作ることができるのかについても、理解することが可能です。

本書で理解できること

科学的知見に基づくテーパリングのガイドラインを理解する事ができる

テーパリングは、徐々にトレーニングの負荷を減らしていく事です。しかし、一口にトレーニングの負荷を減らすと言っても、何をどれくらい減らせば、最も効果が期待できるのでしょうか。

本書では、レーニング負荷の減らし方として、大きく以下5点の観点について、科学的なエビデンスをふまえてガイドラインを提示してくれています。

  • レーニングの強度
  • レーニングの量
  • レーニングの頻度
  • テーパリングの期間
  • 負荷の減らし方(一気に減らすか、徐々に減らすか、等)

フィットネスー疲労理論を理解する事ができる

本書で語られているテーパリングのメカニズムを理解する上で、最も重要と考えられるキーワードが「フィットネスー疲労理論」です。

フィットネスー疲労理論は、トレーニングを行ってから、時間が経つに従い、体力的なパフォーマンス(本書ではPreparednessという言葉を使用しています)がどのように変化していくのかを記述する理論です。そして、Preparednessは、「溜まりやすく抜けやすい疲労「上がりにくく下がりにくいフィットネス」の足し算で決まります。

時間に対する変化の仕方が疲労とフィットネスで異なることから、うまくトレーニング量を調整する事で、フィットネスを比較的高く保ちつつ疲労を軽減させて、高いPreparednessを実現する事が可能になります。

簡潔に説明するのが難しいですが、本書の中でも詳細に解説されていますし、著者の河森さんのブログ記事にも詳しいので、一読されることをおすすめします。

kawamorinaoki.jp

 

様々なシチュエーションに対応したテーパリングの実践

フィットネスー疲労理論をベースに考える事で、様々なテーパリングの実践が可能になります。先にに述べたように、比較的長い期間続く、緩やかなピークを迎えるためのテーパリングのやり方などもその一つです。

また、テーパリング開始時点で、想定より疲労が蓄積している状況など、標準的なガイドラインに当てはまらないような場合も考えられます。そのようなシチュエーションに対しても、フィットネスー疲労理論をベースに考える事で、できるだけ理想的なピークを得られるように、テーパリングのやり方を調整する事ができるようになります。

おわりに

昨年の秋は、自己流でテーパリングを行なって、それなりに良い体調でクライミングする事ができました。しかし、「本当にこのやり方で合ってるのかな?」とモヤモヤした気持ちは拭えませんでした。本書を読んだ事で、なんとなくで行っていたテーパリングのメカニズムを理解する事ができ、自信を持って実践する事ができるように感じています。

関東圏でのクライミングシーズンは、梅雨入りまでまだまだ続きます。本書で理解した事を、岩場でのクライミングでのピーキングに適用して、自分に合ったやり方を身につけたいと思います。