クライミングトレーニング

2020年9月のリハビリとクライミング

左右中指の関節炎リハビリを始めてから1ヶ月強が経ちました。三歩進んで二歩下がるような状況ですが、少しずつ前に進みながら、クライミングも再開しています。 リハビリの状況 2020年9月のクライミング 10月以降の展望 ピリオダイゼーション計画の修正 岩場…

Latticeのハングボードを購入/設置した話(Lattice Testing & Training Rung)

今回は管理人の自宅に新しいフィンガーボード(Lattice Testing & Training Rung)を設置したので、そのノウハウを紹介します。といっても、今回は、壁に直接穴を空けて据え付けていますので、賃貸住宅等で壁に穴を空けられない場合の参考にはなりません。そ…

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構Vol.3)

前回までに乳酸性機構のエネルギー出力の仕組みとクライミングトレーニングを確認してきました。今回は、乳酸性機構によるエネルギー出力を長持ちさせるサプリメントであるベータアラニンについて紹介します。 ベータアラニンが日本のクライミングシーンで市…

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構vol.2)

前回は、運動時に体内で起きている乳酸性機構の生理学的なメカニズムを紹介しました。今回はそのメカニズムをふまえて、30秒以上ハイパワーを継続するクライミングに適応するための効率的なトレーニング方法論を紹介します。 前回までの記事は以下を参照くだ…

エネルギーシステムトレーニング(乳酸性機構vol.1)

だいぶ間が空いてしまいましたが、以前紹介したエネルギーシステムトレーニングの続きです。 今回は乳酸性機構です。瞬発系の運動と持久系の運動の中間にあたるような運動で主役となります。今回は体内での生化学的なメカニズムを確認し、次回はメカニズムを…

2020年目標の再設定と年末に向けたピリオダイゼーション計画

前回、前々回で管理人の肩のリハビリの状況を共有しました。その中で少し触れたのが左右中指の関節炎です。昨年の10月に1ヶ月のレストを行い、一気に治してしまいたかったのですが、完全に治りきらずに一年近く経ってしまいました。結果として、自身の弱い環…

クライミング後に長時間アイシングすることの弊害

前回は非ステロイド系抗炎症薬の常用によるリスクについて考察しました。今回は、同じく炎症を鎮める手段であるアイシングについても触れておきます。 野球でピッチャーが登板した後に肩をアイシングするのと同様に、クライミング後に指をアイシングする事が…

抗炎症薬の常用は慢性腱炎の回復を阻害する話

クライミングを続けていれば、指や肘の痛みは多かれ少なかれ経験することと思います。痛みの原因は多くが腱組織の炎症であり、これらの痛みを取り除くため、ロキソニンやボルタレンなどの抗炎症薬を使った経験がある方も多いのではないでしょうか。 抗炎症薬…

【書籍紹介】THE HARD TRUTH

The Hard Truth: Simple Ways to Become a Better Climber 作者:Hampton, Kris 発売日: 2020/05/14 メディア: ペーパーバック "Hard Truth"とは、「厳しい現実」「受け入れがたい真実」といったような意味です。本書は、なかなかクライミングが上達しない人…

ピンチトレーニングの注意点

ピンチグリップのトレーニングは、以前ピンチブロックに重りをぶら下げて保持する方法を紹介しましたが、もちろんクライミングウォールやハングボードにピンチホールドを取りつけて自身がぶら下がる方法も可能です。 例えば上のInstagram画像のように、緩傾…

スタティックストレッチの利点(trainingbeta podcastからの紹介)

本ブログで何回か紹介しているTrainingbetaのPodcastで新しいエピソードが公開されていました。今回のテーマはストレッチです。 www.trainingbeta.com ストレッチについては、クライミング前後のウォームアップ、クールダウンであったり、クライミングに必要…

ストレングスだけではなくパワーも鍛える

クライミングのトレーニングについて書籍やオンライン記事を読んでいてよく出てくるのが「パワー」と「ストレングス」という言葉です。 以前の記事(クライミングの特殊性を考慮した懸垂のバリエーション - May the friction be with you!)でも少し触れたの…

【アンケート番外】保持力とクライミンググレードの相関研究論文

前回まで3回にわたり、Beastmakerのぶら下がり時間や懸垂回数とクライミンググレードの関係について、アンケート結果をまとめました。新型コロナウイルスの拡大に伴ってBeastmakerのフィンガーボードを自宅に設置した人が増えたことを見込んでアンケートを行…

Beastmakerぶら下がり時間アンケート結果Part3

Part1、Part2からの続きです。今回は懸垂回数とグレードの関係を確認します。Part1、Part2を見ていない方は先にそちらを見ていただくと理解が早いと思います。 takato77.hatenablog.com takato77.hatenablog.com 全体の傾向 クライミング嗜好でグループ分け …

Beastmakerぶら下がり時間アンケート結果Part2

前回に引き続き、Beastmakerのぶら下がり時間とクライミンググレードの関係を調査したアンケートの結果をまとめていきます。前回のブログはこちらです。 takato77.hatenablog.com 前回は、アンケートの各項目について、回答の分布をまとめました。今回からは…

Beastmakerぶら下がり時間アンケート結果Part1

前々回のブログ記事 beastmakerぶら下がり時間とクライミンググレードの調査アンケート - May the friction be with you!で、英国のクライミングアプリメーカーによるアンケートを紹介しました。その後、もう少しライトな形で日本語圏のアンケートを行ってみ…

極めて軽量な携帯型ハングボードi-VOU

携帯可能な国産ハングボード、i-VOU。ずっと欲しかったんですが、在庫がついに出たので、矢も楯もたまらず購入しました。 i-VOUの仕様や基本的な使い方は、公式のyoutubeチャンネルが一番わかりやすいので、そちらを見ていただきながら、本記事ではインプレ…

東京粉末GARAGEチョークレビュー

少し時間が空いてしまいましたが、東京粉末の被験者クラブ・パブリックに申し込み、サンプル製品の「GARAGE」を使用して自宅トレを行っていました。他チョークとの比較実験を簡易に行ってみたので、使用感レビューと合わせて書いてみます。tokyopowder.com …

beastmakerぶら下がり時間とクライミンググレードの調査アンケート

Stay Homeが全国的に継続しており、自宅にクライミングトレーニング環境を整える人が増えてきました。ハングボードの代表的なブランドであるBeastmakerは、注文が殺到しているようです。 Beastmaker2000 そのような状況をふまえ、Beastmakerにぶら下がれる時…

読書レビュー「コンペで勝つ!スポーツクライミング上達法」木村伸介

既にいくつかのブログや媒体で紹介されていますが、木村伸介さん初の著作となる「コンペで勝つ!スポーツクライミング上達法」が発売になりました。管理人もさっそく購入して読んでみましたのでレビューします。 コンペで勝つ! スポーツクライミング上達法 …

クライミングの特殊性を考慮した懸垂のバリエーション

懸垂がクライミングに有効なフィジカルトレーニングであるということは、クライミングコミュニティにおいては、ほぼ自明の事として認識されているように思います。一般的な懸垂の動作としては、バーにぶら下がり両肘を伸ばした状態でスタートし、あごがバー…

クライミングの特性に合った体幹トレーニングの考え方

covid-19による外出自粛要請が長引いており、いつか来る自粛解除を見据えて、自宅トレーニングを行う人が増えてきています。今回は、自宅でもできるトレーニングとして、体幹トレーニングを取り上げてみます。クライミングにおいては、よくある腹筋トレーニ…

腱・靭帯を強くする栄養摂取(コラーゲンとビタミンC)

クライミングにおける栄養摂取については、観点はいろいろありますが、主に筋力増強の観点でプロテインやアミノ酸の摂取が議論されることが多いです。 一方、腱、靭帯などの軟部組織については、決定打にかける状況で、グルコサミン・コンドロイチン・MSMは…

自宅でできるピンチトレーニング

今回は管理人が自分で行ったクライミングトレーニングの話です。昨年末から両中指の第一関節(PIP)が炎症を起こしていて、フルクリンプ・ハーフクリンプを本気で握ると痛みが出ます。オープンハンドやピンチグリップは殆ど痛まないので、それらのトレーニン…

ホームトレーニングの解説集(covid-19による外出自粛対策)

新型コロナウイルス(covid-19)の感染拡大を受け、アメリカ、ヨーロッパを中心に外出禁止の政府指示が出ているエリアが増え、クライミングジムの休業や岩場の利用禁止・自粛が拡大しています。それを受けてクライマーの間で、(social distancing)をお互い…

BFR(血流制限)トレーニングとクライミング

エネルギーシステムの話は一旦お休みにして、先日購入したトレーニング器具の話をします。 上の写真がそれで、BFRトレーニングを行うためのバンドと空気圧設定ポンプです。BFRはBlood Flow Restriction(血流制限)の略で、バンドを腕や脚に巻いて血流を制限…

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(ATP-CP機構 vol.2)

ATP-CP機構のエネルギー代謝を構成する主要物質はATPとクレアチンリン酸(CP)ですが、前回、このATPとCPの蓄積量はトレーニングで向上することはなく一定、という話をしました。CPはサプリメントで蓄積量を増やすことができますが、トレーニングによって体が…

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(ATP-CP機構 vol.1)

前回の投稿 エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(全体像) - May the friction be with you! からの続きです。エネルギシステムトレーニングについて、各エネルギー代謝の機構ごとに深掘りしていきます。今回はATP-CP機構の1回目です。 A…

エネルギーシステムを意識したクライミングトレーニング(全体像)

以前からブログ内で何度か言及しているエネルギーシステムトレーニングについて、数回に分けて紹介したいと思います。 今回は全体像を概観し、次回以降、ATP-CP機構・乳酸性機構・有酸素機構のそれぞれについて、仕組みやトレーニングの方法論、有効なサプリ…

データドリブンなクライミングトレーニング(Lattice Training)

これまで本ブログでは、クライミングのトレーニングやリハビリの方法自体について取り上げてきましたが、今回はそこから少し離れて、クライミングの実力向上に影響する要素を明らかにする研究の状況であったり、それらの研究に寄与するデータを大きくスケー…